• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

O157ゲノムからのIS切り出しを促進する新規タンパク質IEEの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 24590543
研究種目

基盤研究(C)

研究機関独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

楠本 正博  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (40548210)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード腸管出血性大腸菌 / O157 / IEE / DNAマイクロアレイ
研究概要

腸管出血性大腸菌O157のゲノムには数多くの挿入配列(IS)が存在し、ISがゲノム構造の変化を引き起こすことでO157が多様性を獲得することが示されている。IEEはISの切り出しおよびISを介したゲノムの多様化に関与する因子であり、その生物学的意義の解明に向けて、以下のようなO157変異株についてDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。
(1) IEE過剰発現株:IEEのみを過剰発現させた場合、約5,200遺伝子のうち発現が2倍以上変動する遺伝子はほとんど見られなかった(増加0、減少1)。また、IS転移酵素(TPase)の過剰発現により198遺伝子の発現が変動した(増加168、減少30)が、IEEとTPaseの両方を過剰発現させると遺伝子の発現変動は152(増加128、減少24)に減少し、全体的にIEEがTPaseによる遺伝子の発現増加を打ち消す傾向にあることが確認された。
(2) IEE遺伝子欠失株:過剰発現とは異なりIEE遺伝子の欠失による影響は大きく、153遺伝子の発現が変動した(増加57、減少96)。発現が最も大きく増加した遺伝子はシグマ因子に関連するyhbHであり、同時に多くのリボゾーム関連遺伝子の発現が減少していた。本検討には対数増殖期の菌を用いたが、このような遺伝子変動は定常期に起こることが知られていることから、IEEは菌の増殖に関与すると考えられる。また、IEE遺伝子の欠失によりNO2還元酵素の転写調節に関与する遺伝子(ECs0207)の発現が減少し、NO2の還元に関連する4遺伝子の発現が増加していた。ただし、NO2代謝系の発現変動は細胞周期に関連するシグナル応答などを介した間接的な作用の可能性も考えられる。
以上の検討により、IEEはTPaseに起因する遺伝子発現の変動を打ち消す作用があり、さらに菌の増殖にも関与することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IEEはゲノムからのISの切り出しを促進する因子として同定され、ISを介してゲノムの多様化にも関与することが判明した因子であるが、他の機能や生物学的な意義は未だに不明のままである。そこで平成24年度は、IEEが持つ生物学的な意義を知る手がかりを得るために、網羅的な遺伝子発現解析を行いIEEの発現と相関する因子を探索した。その結果、ISへの関与の他にも、IEEがyhbHやECs0207など各種遺伝子の転写調節に関与する遺伝子の発現に影響し、さらには菌の増殖に関与することが明らかになったことで、今年度の目標はほぼ達成された。

今後の研究の推進方策

当初の計画では、平成25年度はIEEの変異体を作製し、IS切り出しに重要なアミノ酸領域を特定する予定であった。しかし平成24年度の検討により、IEEが転写調節因子を介して菌の増殖に関与することが明らかになったため、(IS切り出しではなく)yhbHやECs0207などの転写調節因子の発現を指標としたIEE変異体の作製および解析を行う予定である。これにより変異体の解析手法が変更となるが、最終的な評価方法の変更だけで対応できるため、当初の計画通り、変異体作製を中心とする研究費で実施可能と考えられる。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi