研究課題/領域番号 |
24590544
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
甲斐 雅規 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター感染制御部, 室長 (10291147)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハンセン病 / ゲノム |
研究概要 |
らい菌を原因菌として発症するハンセン病の2病型、多菌型と少菌型の間には様々な面で大きな隔たりがあり、予防・診断・治療に関して、異なる対処の必要性が認識されている。 一般に病型は生体側の免疫の違いによるとされているものの、多菌型と少菌型に分かれる具体的な要因は未だ不明のままである。本研究は、その2病型をもたらす何らかの要因が生体側の免疫状態の違いとは別に菌側にも何らかの要因が存在する可能性を考え、次世代ゲノム解析にてその要因を探索・同定することを目指している。 初年度は主に多菌型ハンセン病患者由来らい菌(多菌型らい菌)を用いた解析を行い、ゲノムシーケンスを行い、既にデータベースにあるらい菌株TN及びBr4923との比較解析を行い、その結果としていくつかの新しい知見を得た。 多菌型少菌型いずれにおいてもらい菌は人工培地において培養が不可能であり、その培養は日本ではヌードマウスのフットパッドでのみ可能であり、しかも世代時間はヌードマウスフットパッドで約13日間という長時間を要すことから現在多菌型らい菌については保存菌があるが、少菌型ハンセン病患者からのらい菌(少菌型らい菌)は培養できた菌が存在しておらず、本実験では患者バイオプシーから抽出した菌由来のDNAを用いたが、ゲノムシーケンスに関してはサンプル中に存在する少菌型らい菌DNAの量があまりにも少なく、現在のところほとんどデータが得られていないのが現状である。 らい菌株の由来は地理的な違いや病態の異なる患者由来等様々であり、それらのゲノム解析が可能であれば、本研究の主目的である病型決定因子に限らず、不明であったらい菌の性状や病原性因子等が明らかとなることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は多菌型ハンセン病患者由来らい菌ですでにヌードマウスのフットパッドでの培養に成功し、ハンセン病研究センターにて保存している菌株を用いてそのゲノムシーケンスを次世代型オートシーケンサーにより決定した。もっとも解析がすすんでいるらい菌Kyoto-2株ではシーケンス断片のアッセンブルが終わり、接続されなかったgapもPCRと通常のシーケンスですべて埋めることができた。すでに登録されているらい菌TN株及びBr4923株との比較解析を行った結果、使用したKyoto-2株において見られるいくつかの特徴的な違いを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
多菌型ハンセン病患者由来らい菌(多菌型らい菌)のゲノム解析及び比較ゲノムを進める。 少菌型ハンセン病患者からのらい菌(少菌型らい菌)については、その分離は極めて困難が予想されていたが、実際患者バイオプシーから抽出して保存しているDNAを用いて実験を行ってみた結果、PCR実験ではある程度の菌由来DNAの増幅は認められるものの、ゲノムシーケンスのためには不十分なサンプル量であることがわかった。そこで考えられる今後の方策として、以下のことを検討する予定である。1つは少菌型患者由来サンプルにわずかに存在するらい菌もしくはらい菌DNAを増幅させること。2つ目は現在使用している次世代型シーケンサーillumina GAIIを最新機種であるHiSeqに換え情報量の拡大を図る。3つ目は、どうしても少菌型由来らい菌の完全シーケンスが不可能であった場合、多菌型らい菌の解析で得られた多くの情報に基づき、個別に少菌型らい菌DNA増幅を行い比較することで、2病型を分ける何らかの因子の発見を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
多菌型ハンセン病患者由来らい菌(多菌型らい菌)Kyoto-2株を含め他の3株、Hoshizuka-4株、Ryukyu-6株、Thai-53株のゲノム解析及び比較ゲノム解析を進める。これまでに得られた研究成果を国内外の学会で発表するとともに成果の一部を論文にまとめる。 海外協力国で少菌型ハンセン病患者バイオプシーサンプルから抽出したらい菌DNAの分与を受け、らい菌ゲノムの次世代シーケンスを行う。また、上記DNAで不十分だった場合は少菌型患者から得たバイオプシーサンプルの一部が-80℃で保存してあるのでこれを利用する。あるいは菌の分離操作によるらい菌損失を防ぐため実施せず、サンプルのトータルDNAを抽出しシーケンス解析を行う。平成24年度に得られた結果を基にして、解析ソフトである、Mapview、Artemis、Genetyx等を用いて、構築してある多菌型らい菌ゲノムデータベースと少菌型ゲノムシーケンスを詳細に比較することにより、少菌型らい菌ゲノムに特徴的な因子を探索、発見する。 また、保管してある多数の臨床検体由来のDNAについて検出された違いの有無を調査し発見した因子が実際に2病型を分ける因子であることを検証する。
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