研究課題
らい菌感染で発症するハンセン病には多菌型と少菌型の2病型がある。本研究の主目的は、病型を分ける菌側要因を発見することである。比較対照に日本の多菌型患者由来らい菌Kyoto-2株のゲノム配列を決定した。データバンクに登録後、すでに登録されているらい菌TN株及びBr4923株と比較解析を行い、Kyoto-2株に特徴的な情報を得た。保存らい菌株を調べた結果、Kyoto-2で特徴的なSNPsを日本の本州および韓国で分離されたらい菌の多くが示すことが明らかとなった。それら株を地理的分布からNortheast Asian(NA)strainと命名した。一方、少菌型ハンセン病患者由来らい菌は菌数が極端に少ないため患者材料から直接らい菌DNAの解析を試みた。サンプルはベトナムで採取し、対照として同地域から多菌型サンプルも採取した。DNA抽出、ゲノムライブラリー作成、その後イルミナ社のNextSeq500で解析した。らい菌由来断片は少菌型では0.008%、多菌型では0.012%であった。多菌型のゲノムは全体を解読し、以前報告のある86カ所のSNPsを利用したタイピングでKyoto-2と同じ3Kタイプを示した。しかし、全SNPsによる樹形図ではKyoto-2が含まれるNA strainが属す枝(グループ)には属さないことが示された。少菌型の解読は困難を極め未終了であるが、近く終了が見込まれ少菌型特有の領域の発見が期待されている。本研究において日本の本州分離らい菌がこれまで知られていない遺伝子型を示し、韓国分離株とともに樹形図に新しい枝を形成したことは、らい菌の分子進化あるいは伝播様式の詳細解明への一助として貢献できたと考えられる。また、今後少菌型由来らい菌のゲノム解析から特徴的な領域が発見できればそれはこれまでのハンセン病病型の概念をより正しく理解できると期待される。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
日本ハンセン病学会雑誌
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