髄膜炎菌Neisseria meningitidis GltT-GltMグルタミン酸トランスポーターによるグルタミン酸の取り込みが髄膜炎菌の宿主細胞の侵入に必須であるが、その分子機序に関しては不明のままであった。その後、さらに解析を進め、その作用機序に関して以下のような結果が得られた。 1.血清を含む培地(Assay medium[AM])ではgltT-gltM欠損株は野生株に比べて1/100の細胞侵入能の低下が認められたが、血清を含まない培地(AM-serum[AM(-S)])中ではその低下が1/10までに抑圧された。また、そのgltT-gltM欠損株の細胞侵入能低下の抑圧はAM(-S)へのNaCl添加では解除されなかったが、500μMグルタミン酸添加で解除された。 3.AM中のグルタミン酸濃度はAM[-S]と比較して低濃度であった。 4.低MOIで感染させた際にはAM[-S]への500μMグルタミン酸添加によってもgltT-gltM欠損株の細胞侵入能低下の抑圧は解除されなかった。 5.Ezrinの集積もAM中のgltT-gltM欠損株では認められず、AM(-S)中で認められるが、AM(-S)へのグルタミン酸添加によりその集積が解除される現象が認められた。 以上の結果から、髄膜炎菌のGltT-GltMトランスポーターは宿主細胞へ接着・侵入する際に自身の環境中(マイクロコロニー内)のグルタミン酸濃度を一過的に低下させて髄膜炎菌の細胞侵入を促進している可能性が示唆された。
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