研究課題
基盤研究(C)
医療の高度化に伴って、深在性真菌症が問題となっている。その中でも侵襲性アスペルギルス症は致死率 50% を越えるため、新しい治療法の開発が渇望されている。本研究ではアスペルギルス症の主要原因菌Aspergillus fumigatus のプロテインキナーゼの解析を通じて細胞周期と菌糸成長速度との関係を解明し、病原性との関連性 を検討することを目的とする。平成24年度では、MPS1キナーゼについての詳細な解析を進めた。先行研究において、ATPアナログ阻害剤1NM-PP1で特異的にキナーゼ活性を阻害できるanalog-sensitive変異を持つMPS1キナーゼ遺伝子を導入したA. fumigatus株を構築し、MPS1キナーゼ活性が生育に必須であることを見いだしている。この株において核小体蛋白NopAと赤色蛍光蛋白mCherryを融合させた蛋白を発現させ、4DライブイメージングによりMPS1キナーゼ活性を抑制させた際の核の挙動を観察した。その結果、MPS1キナーゼ活性抑制状態では、核の分配が正常に行われず、それによって生育が抑制されていることが示唆された。また、必須キナーゼと考えられる、Auk1およびAuk2について、NiiAプロモータを用いた遺伝子発現抑制株を構築し、Auk1が必須遺伝子であることを見いだした。また、PLK1キナーゼおよびAUK4キナーゼについて、相補株の構築を行った。先行研究により、遺伝子破壊株では生育の遅延および分生子形成率の低下が表現型として観察されていた。この遺伝子破壊株にピリチアミンマーカーを含むキナーゼ遺伝子を導入し、遺伝子破壊による表現型を相補できることを確認した。今後、これらのキナーゼと細胞周期との関連を調べることにより、Aspergillus fumigatusの病原性との関連性を検討していく。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、遺伝子相補株の作製を中心に、遺伝子組換え株の作製に重点を置いて実験を行った。遺伝子相補株の作製について、予定していた3種類のうち、2種類の遺伝子破壊株に対して相補株の取得に成功した。遺伝子発現抑制株についても2種類構築し、そのうち1種類のAuk1キナーゼが必須であることを見いだした。まだ構築の完了していないキナーゼ遺伝子もあるが、おおむね、実験は順調に進んでいると考えられる。
相補株が取得できたPlk1およびAuk4について、引き続き、マウスへの病原性の検討、肺胞上皮細胞との相互作用などの詳細な表現型解析を行い、それぞれのキナーゼの機能を解明する。そのために、親株および遺伝子破壊株に、ピリチアミン耐性マーカーおよび赤色蛍光蛋白mCherryを発現するカセットDNAを導入し、菌体が赤色蛍光を呈する株を構築する。免疫抑制マウスに構築した株を接種し、病原性を検討するとともに、in vivoイメージングにより生きたまま病巣の大きさを観察する。また、遺伝子破壊株の表現型が明らかになっているが相補株が取得できてないキナーゼについて、相補株取得の試みを続ける。
今年度に引き続き、遺伝子組換え実験に必要な消耗品、感染実験に用いるマウス、肺胞上皮初代培養細胞、等を物品費として使用する。成果発表および情報収集のために、国外出張2回、国内出張5回を旅費として計上する。その他、実験補助に対する謝金、DNA合成や解析等の委託費、論文校正料も計上する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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