研究課題/領域番号 |
24590546
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
梅山 隆 国立感染症研究所, 真菌部, 主任研究官 (20360696)
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キーワード | Aspergillus fumigatus / アスペルギルス症 / シグナル伝達 / プロテインキナーゼ / 病原真菌 / 真菌症 / 糸状菌 / 細胞周期 |
研究概要 |
医療の高度化に伴って、深在性真菌症が問題となっている。その中でも侵襲性アスペルギルス症は致死率 50% を越えるため、新しい治療法の開発が渇望されている。本研究ではアスペルギルス症の主要原因菌Aspergillus fumigatus のプロテインキナーゼの解析を通じて細胞周期と菌糸成長速度との関係を解明し、病原性との関連性 を検討することを目的とする。平成25年度では、PLK1キナーゼについての詳細な解析を進めた。前年度までに遺伝子破壊株及び遺伝子相補株の取得は終了している。A. fumigatusにおいて遺伝子破壊に成功したことから、必須遺伝子ではないことが示唆された。破壊株のコロニー生育速度は親株と比べて約60%に低下していた。しかし、出芽が親株よりも2時間早く、また、37℃10時間培養で親株は分岐菌糸を示さないが、破壊株では高頻度に観察された。分生子形成効率が、親株と比較して約12%に低下し、親株のような円柱状の分生子頭を形成していなかった。遺伝子破壊株の分生子の電子顕微鏡解析を行ったところ、表層構造に異常が観察され、分生子頭形成だけでなく、分生子そのものが未成熟であり、これが出芽時期が早い原因となっていることが推察された。抗真菌薬感受性には影響はなかった。以上の結果から、Plk1は菌糸の分岐と分生子形成に重要な役割を果たしていることが示唆される。今後病原性について検討し、新しいクラスの抗真菌薬の標的としての可能性を探る。AUK4キナーゼについても前年度までに遺伝子破壊株および相補株の取得は終了しており、コロニー生育速度の低下、分生子形成効率の低下が観察されている。今後、これらのキナーゼと細胞周期との関連を調べることにより、Aspergillus fumigatusの病原性との関連性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、遺伝子破壊株および遺伝子相補株の表現型の観察に重点を置いて実験を行った。ヒトや酵母の相同遺伝子は必須であるが、アスペルギルスでは必須では無く、予想外の結果が得られた。遺伝子破壊株に蛍光蛋白質を発現させる株については構築を行っている最中である。まだ構築の完了していないキナーゼ遺伝子もあるが、おおむね、実験は順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Plk1およびAuk4について、引き続き、マウスへの病原性の検討、肺胞上皮細胞との相互作用などの詳細な表現型解析を行い、それぞれのキナーゼの機能を解明する。また、分生子の表層に異常が観察されたため、表層分子の組成を生化学的に分析する。また、遺伝子破壊株の表現型が明らかになっているが相補株が取得できてないキナーゼについて、相補株取得の試みを続ける。さらに、前年度までに必須であると判明した複数のキナーゼについても解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
出張費用が予想より少なかったことにより、未使用額が発生した。 未使用額は、学会出席に伴う旅費および学会参加費として使用する。
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