研究課題/領域番号 |
24590548
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
星野 忠次 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90257220)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウイルス / インフルエンザ / 阻害剤 / 医薬品設計 / 有機合成 / 活性測定 / ヘマグルチニン / ポリメラーゼ |
研究概要 |
インフルエンザウイルスの薬剤耐性に対処するために、作用機序の異なる複数の薬剤を備えておくことは、極めて重要である。本研究では、現在の認可薬の標的対象とは異なるインフルエンザウイルスの酵素タンパク質に注目し、治療薬候補化合物の開発を進めている。準備研究の段階で、ポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を標的として、ウイルスの感染を阻害する化合物を見出している。本年度は、これらの化合物をもとに十数種類の類似化合物を合成し、この中から先導化合物より高い阻害活性を持つ新規の化合物を得た。本研究では、理論計算・有機合成・生化学実験を融合させ、阻害剤の開発を進めている。 具体的に研究は、初めに、化合物と標的タンパク質との相互作用を計算機で解析して薬物の分子設計を行った。算出された結合親和性を参考に、活性増加の見込める分子構造をデザインした。官能基付加や官能基置換をした修飾化合物について、同様に計算機内で結合親和性を予測して、先導化合物に対して、計算機の中で官能基修飾を施し、より活性の高い誘導体を探索した。次に、計算機解析により有望と判断された化合物とその誘導体の有機合成を行った。有機合成によって得た化合物について、酵素阻害活性があるか否かを、生化学実験により測定した。 薬物設計において、活性化合物がどのように酵素活性部位に結合しているかを知ることは、化合物を改変して、より活性の高い薬物を設計するために、必要不可欠の情報である。化合物の酵素活性部位での結合構造に関する情報を得るために、標的タンパク質と化合物との共結晶を作成して、X線結晶構造解析を行うことは有効な手段である。タンパク質の結晶化を試みたが、幾つか微小な結晶は得られたものの、十分なX線回折が得られる結晶は、現在のところ取得できていない。今後、注力して研究を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に設計し合成した十数種類の類似化合物の中には、先導化合物より高い阻害活性を持つものが得られた。さらに阻害活性の高い新規合成化合物が得られたことで、標的タンパク質との共結晶化において、比較的良好な結晶が得られ始めた。また本研究では、先導化合物を足掛かりに、理論計算・有機合成・生化学実験を融合させ、標的タンパク質に対する阻害剤の開発を行うことを計画したが、いずれの研究分野も遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、理論計算・有機合成・生化学実験を融合させ、インフルエンザウイルスが持つタンパク質分子を標的とした阻害剤の開発を進める。本研究は、理論計算・有機合成・生化学実験を融合させ、これらを効率的に遂行することに特徴がある。この融合は目標達成に向け欠かせない。具体的に次の手順で研究を進める。 1.化合物と標的タンパク質との相互作用を計算機で解析して、薬物の分子設計を行う。 2.計算機解析により有望と判断された化合物とその誘導体の有機合成を行う。 3.有機合成された化合物分子の酵素阻害活性を生化学実験で測定する。 4.化合物の存在下で、インフルエンザウイルスの他の細胞への感染能を定量化する。 5.阻害活性測定の結果を、化合物の設計と合成に反映させて、候補薬物の最適化を繰り返す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するための実験機器は、ほぼ揃っている。従って、研究経費のほとんどを、合成試薬の購入費ならびに生化学実験の消耗品費に充てる。さらに研究費の一部を、研究成果を公表するための学会出張旅費ならびに論文出版費に使用する。
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