研究課題/領域番号 |
24590550
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安居 輝人 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (60283074)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / EBV / LMP1 / MHV68 / 胚中心 / リンパ球 / 抗体 / 発がん |
研究概要 |
ヘルペスウイルス感染は炎症疾患や発がんに関わるDNAウイルスである。その中でもヒトガンマヘルペスウイルス(γ-HV)はリンパ球、上皮細胞に直接潜伏感染することよって、がん発症に関与することが強く示唆されているが、十分に明らかではない。本研究ではγ-HV関連病態発現の分子機構の解析を動物モデルを用いてウイルス学的に行った。 発がん過程におけるウイルス由来分子-宿主分子相互作用による免疫応答制御機構の破綻過程について、我々が既に作成しているEpstein-Barrウイルス(EBV)由来膜タンパクLatent membrane protein 1 (LMP1)、並びにLMP2aを2次リンパ組織中の胚中心B細胞特異的に発現するマウスを用いて免疫学的解析を行った。LMP1発現マウスでは胚中心形成異常、LMP2a発現マウスでは正常な胚中心形成は認められるものの高親和性抗体の産生異常が認められた。胚中心はEBVLMP1やLMP2aの発現が認められている場所であり、LMPが胚中心に発現することにより獲得免疫応答が減弱し、EBV感染成立に寄与していることが示唆された。 一方、マウスのγ-HV感染モデルで知られているMurine herpesvirus 68 (MHV68)を用いて、感染動態の可視化を試みた。MHV68ゲノムにGFPを組込んだリコンビナントウイルスを作成し、これを経鼻感染させ3日後の感染部位をGFP蛍光強度で追跡した結果、唾液腺に著しいウイルス感染が確認された。これはヒトEBVで認められる唾液中のウイルス放出と極めて類似しており、感染後期に惹起される肺炎症の誘導メカニズムを考える上で大変重要で極めて興味深い知見が得られた。近年ヘルペスウイルスと肺炎症との関連性が示唆される中で、このMHV68感染マウスモデルが肺炎症メカニズムの解明に貢献できる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成功の鍵は全て平成24年度におけるマウスの樹立とリコンビナントMHV68の作成にかかっていた。しかし、本研究計画で必要なマウス及びrMHV68作成については既に終了しており、本研究の遂行に何ら問題はなかったことが理由としてあげられる。感染実験や免疫学的実験の遂行には厳密に管理された飼育環境が必要であるが、その管理体制維持及びその使用経験に基づいた実験の忠実性等は現有施設で実験継続できたのも一因にあげられる。さらに、LMPによる免疫細胞動態の変化が本研究で容易に得られたことが成果として特筆できる。この結果は我々が長年行なってきた「リンパ球分化機構の正常と異常」に関する研究において免疫学的、あるいは分子生物学的手法が既に確立されていた点により推進されたことが理由と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、現時点まで研究計画通り達成できているので、今後も引き続き平成25年度計画に基づいて研究計画を遂行する予定である。特に研究計画に必要なモデルマウスの作成については当初の計画通り着手しており、その一部は作成済みである。従って、平成24年度終了時点で来年度研究計画に必要な材料は一部用意できたので、未完了の研究材料の作成も今後継続するが、現有材料を用いて平成25年度計画の遂行は可能であると考えられる。 一方、本研究計画の特色として動物モデルを使用した実験計画が主となるため、今後研究を遂行する上での大きな問題点としては、一つの実験を遂行するにあたって、3ヶ月から半年を要する場合が多い。いかにその時間を短縮するかが大きな課題となり、実験計画遂行の達成度にも影響すると思われる。従って、ある一定期間の実験進行状況に応じて実験手法の変更を計画している。例えば平成25年度計画においてMHV68感染によるBリンパ腫形成機構の解明のための実験では現在のままの計画ではおそらく実験期間は、中長期的(最長で18ヶ月)になる可能性がある。そこで3ヶ月をめどに血清採取による生化学的データの解析により、化学物質投与による発がん誘導に切りかえ、期間短縮をはかるべく準備をしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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