研究概要 |
現在、疫学的にヒトがんの20%はウイルス発がんであることが示唆されている。その中でも全世界人口の90%に感染するEpstein-Barrウイルス(EBV)はリンパ腫、上皮がんに関与するがんガンマヘルペスウイルスである。EBVはウイルス遺伝子にコードされている8種類の潜伏遺伝子産物を発現するが、Latent membrane protein 1 (LMP1)は上皮細胞において強い細胞形質転換活性を有し、様々なEBV関連疾患の発症に関与していることが示唆されているが、そのがん化過程の作用機序は未だ明らかではない。 本研究ではEBVを含むガンマヘルペスウイルス関連発がんの分子機構を明らかにするため平成25年度計画に基づいて、EBV遺伝子に焦点をあてEBVによるB細胞形質転換機構のLMP1シグナル分子の恒常的活性化によるBリンパ腫形成の検討を行った。 24年度に作成された細胞種特異的発現を可能にしたLMP1ノックインマウスを用いLMP1を発現したマウスB細胞を単離し、不死化に必要なEBV潜伏遺伝子感染遺伝子、あるいは宿主側因子の同定を試みた。EBV潜伏感染遺伝子及び宿主因子の恒常的活性化変異体をLMP1陽性B細胞にレトロウイルスで導入しその不死化効率を検討した。その結果、LMP1を含む全てのEBV潜伏感染遺伝子の発現によりマウスB細胞の不死化が認められた。一方、LMP1によって活性化が認められるNFkB1, NFkB2, Akt, Stat3の恒常的活性化変異体を単独で導入してもB細胞の不死化は達成されなかった。しかしながら、SV40 large T antigen(LT)とLMP1の共発現によりB細胞の不死化が認められたことから、LTが不活性化するp53及びRb経路がマウスB細胞の不死化に関与していることが明らかとなった。EBNA1、EBNA3Cはそれぞれp53, Rb経路を不活性化することが知られていが、今回得られた結果はEBVによるB細胞不死化にLMP1とともにp53、 Rb経路不活性化の必要性を示唆している。
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