これまでの実験で、インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼの活性上昇に伴って、ヌクレオチドあたりの変異率が上昇する傾向があることがわかり、高い変異率のウイルスRNAポリメラーゼ複合体には、癌細胞で転写活性化因子としてはたらいていることが知られている宿主タンパク質が結合していることがわかった(未発表)。これらの蛋白質は、ウイルス複製時に変異を促進している宿主側要因ではないかと考えられた。 一方、同じ選択圧を加えた継代培養実験において、子孫株に、選択圧に対応する特定の変異を生じやすいウイルス株と生じ難いウイルス株があることもわかってきた。したがって、子孫株に変異を生じやすいウイルス株を、変異の生じ難いウイルス株と比較することで、ウイルス複製時に変異を促進しているウイルス側要因が見つかるかどうかを調べることにした。実験では、2009年の新型インフルエンザウイルス流行時に、同一患者から得られた2株のウイルスを使用した。選択圧のかかる環境下においてウイルスを継代培養し、子孫ウイルスのウイルス集団内の変異率を次世代型シークエンサーで調べた。遺伝子の変異傾向をプロットし、今後、既存のデータベース内遺伝子情報を加えて解析を続けていく予定である。
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