研究課題/領域番号 |
24590554
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂口 剛正 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70196070)
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研究分担者 |
小田 康祐 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 特任助教 (60571255)
入江 崇 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (70419498)
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キーワード | ウイルス / アクセサリー蛋白質 / 自然免疫 / インターフェロン / 蛋白質結晶化 / 蛋白質構造解析 / 共結晶化 |
研究概要 |
センダイウイルスのアクセサリー蛋白質(V, C)には自然免疫を抑制する機能がある。このためには、V蛋白質はインターフェロン(IFN)関連転写因子IRF3と結合すること、C蛋白質はIFN関連転写因子STAT1と結合することが重要であると考えられている。これらのアクセサリー蛋白質の結晶化と立体構造の解明を行い、その相互作用の分子機構を解析し、アクセサリー蛋白質による自然免疫阻害の構造学的な分子基盤を明らかにすることを本研究の目的としている。 平成25年度には、前年度に得られたY3(C蛋白質の一部)とSTAT1のN末端ドメインの複合体の結晶から、Spring-8で得られたデータも用いて分解能2.0Åで立体構造を決定した。両者の結合に重要なC蛋白質側のアミノ酸残基150, 154について、点変異体を作製して結合を解析した。また、既知の点変異体について、プラスミドからの過剰発現系を用いることで、CとSTAT1の結合、CによるIFNα/βならびにIFNγのシグナル伝達阻害を改めて調べて、構造と対応させた。構造によって変異体の結合能およびIFNシグナル伝達阻害能が概ね説明できた。 また、IFNγシグナル伝達に関与するSTAT1二量体の活性化阻害機構について、構造から合理的な仮説を構築した。過剰量のC蛋白質が蓄積する感染後期に、STAT1二量体の転写活性化はおこらない一方で、STAT1二量体のリン酸化が進行するという現象についても、その機構についての仮説を提唱し、精製したSTAT1, Y3, TC45(phoshatase)蛋白質を用いた試験管内脱リン酸化反応によって確認した。以上を論文にまとめるべく努力している。 IFNα/βシグナル伝達に関わるSTAT1/STAT2ヘテロ二量体の活性化阻害についても仮説を構築したが、実験による確認にまで至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスC蛋白質と転写因子STAT1の複合体の構造を決めることができ、インターフェロンγのシグナル伝達に関わるSTAT1二量体の活性化阻害と過剰リン酸化についての仮説を構築した。関連して、蛋白質結合面についての解析も進んでいる。概ね想定したように研究が進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた結果を基にして、さらに結晶の取得と立体構造の解明を行いながらC蛋白質と宿主蛋白質Alixの結合について解析する。Alixは多小胞体形成あるいは細胞質分裂のように膜構造の変換に関係するESCRT複合体の蛋白質であり、ウイルス出芽に関連する。CとAlixの結合は、センダイウイルスの粒子形成と出芽に関与すると考えられている。すでにこれらの蛋白質の共結晶を取得しており、構造の解析を行っている。また、もうひとつのウイルスアクセサリー蛋白質であるV蛋白質と転写因子IRF3の結合について、構造学的な解析を目指して結合ドメインの同定、蛋白質発現、蛋白質結晶の作製を試みる。 また、STAT1とある程度構造に共通性のある、STAT2, STAT3, STAT4のN末端ドメインとC蛋白質との結合を解析する。各精製蛋白質とC蛋白質の結合をBiacoreを利用して解析し、両蛋白質の結合面を形成するアミノ酸残基の違いと結合の強さを比較する。また、C蛋白質とSTAT1の結合面の解析から、STAT3に結合するようにC蛋白質の改変を試みる。STAT3阻害は抗がん剤として用いられているので、これによって抗腫瘍効果のある蛋白質作製の可能性が生じる。 以上のように、さらに関連するウイルス蛋白質と宿主蛋白質の結合を調べて、研究の範囲を広げていく一方で、前年度までに得られたC蛋白質とSTAT1との結合について得られた知見を取りまとめ、成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は結晶の作製とSPring-8での解析を繰り返す予定であったが、構造に適した結晶が早期に得られ、研究が予想よりも順調に進行した。これによる予算の使い残りを繰り越した。 本年度(最終年度)には、研究の更なる推進を行うとともに、科学雑誌への投稿、国際学会での成果発表を予定している。繰り越し分は、本年度の予算と合わせてこれらに使用する。
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