研究課題
IAV(A型インフルエンザ・ウイルス)感染におけるトリプシノーゲン、Ca2+-結合蛋白質、及びインターフェロン関連遺伝子群の役割を明らにすることを目的とした研究を実施した。肺癌由来の培養細胞(感染感受性細胞と感染抵抗性細胞)にIAVを感染させ、トリプシノーゲン (hPRSS1,hPRSS2,hPRSS3)、Ca2+-結合蛋白質(ANXA10,FETUB等)、IRFs(Interferon regulatory factors)、 Interferon-stimulated genes (ISGs)を含む約100種類の遺伝子発現の変化を調べた。感染感受性、抵抗性のいずれの細胞においてもIAV感染によりIRF1、IRF7、 及び多くのISGsの発現上昇がみられた。一方、上記ヒト・トリプシノーゲン遺伝子群、Ca2+-結合蛋白質群のIAV感染による顕著な変化はみられなかった。トリプシノーゲンの膵臓以外の細胞での発現は知られていたが、その活性化のメカニズムは明らかでなかった。我々は膵臓から分泌されたトリプシノーゲンを活性化する消化酵素であるエンテロキナーゼが十二指腸上皮のみならず、いろいろなヒトの培養細胞で発現していることを示し、エンテロキナーゼを介したトリプシノーゲンの活性化が、IAV感染を顕著に促進することを明らかにした。この経路は新たなIAV感染促進経路であり、エンテロキナーゼは基質特異性が非常に高いこと、及びその触媒ドメインが細胞外に露出していることから、新たな抗インフルエンザ薬の標的になり得ることが示唆された。尚、現在HIV(Human immunodeficiency virus)及びHTLV-1(human T cell leukemia virus-1)感染においても、このエンテロキナーゼを介したトリプシノーゲンの活性化の影響を検討中である。
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