研究課題/領域番号 |
24590556
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
齊藤 峰輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40398285)
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キーワード | HTLV-1 / HBZ / 慢性炎症 / 感染防御 / ワクチン |
研究概要 |
HTLV-1マイナス鎖にコードされるウイルス遺伝子HTLV-1 bZIP factor(HBZ)の慢性炎症形成における意義を明らかにするため、昨年度に引き続き抗HBZモノクローナル抗体の作製を行った。昨年度はHBZのC末端ペプチド抗原(HBZ 193-206:CVNYWQGRLEAMWLQ)でウサギを免疫して抗HBZポリクローナル抗体を、同じペプチド抗原をWKAラットに免疫してハイブリドーマ 法によりラット抗HBZモノクローナル抗体を作製した。本年度は他の2か所のHBZペプチド (HBZ 58-76: LRRGPPGEKAPPRGETHRDおよびHBZ 145-163: KAKQHSARKEKMQELGIDG)をC57BL/6マウスに免疫して合計5クローンの新規マウス抗HBZモノクローナル抗体を、さらにコムギ無細胞蛋白発現系により作製した組換えHBZ蛋白質を抗原として合計9クローンの新規マウス抗HBZモノクローナル抗体を作製した。これら作製した抗HBZ抗体を用いて様々な組み合わせで検討した結果、(1)フローサイトメトリー(2) 蛍光免疫染色(間接法)(3) ウエスタンブロッティング(4) サンドイッチELISAによるHBZ蛋白質の高感度な検出系を確立した。特に、サンドイッチELISA法では、HBZ強制発現細胞や各種HTLV-1感染細胞株に発現するHBZ蛋白質を再現性よく、かつ定量的に検出することができた。一方、免疫不全マウス(NOG系統)の脾臓内にHTLV-1非感染正常成人の末梢血単核球とマイトマイシン処理したHTLV-1感染細胞を同時移植することで、in vivoでヒトT細胞に効率よくHTLV-1を持続感染させるヒト化マウス実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、本年度もHBZ特異的モノクローナル抗体による高感度なHBZ蛋白検出系の確立を目的に研究を遂行した。昨年度までは、ペプチド抗原、組換えHBZ蛋白質のいずれを用いた場合においても、ハイブリドーマ法によってマウス抗体は得られなかったが、今年度は実験方法の改善により最終的に合計14クローンの新規マウス抗HBZモノクローナル抗体を得ることができた。これら新たに作製したモノクローナル抗体を用いて、(1)フローサイトメトリー(2) 蛍光免疫染色(間接法)(3) ウエスタンブロッティング(4) サンドイッチELISAによるHBZ蛋白質の高感度な検出系を確立した。今回確立した検出系は、昨年度までの系と比較して感度・特異度とも飛躍的に向上していた。一方で、免疫不全マウス(NOG系統)を用いてin vivoでヒトT細胞に効率よくHTLV-1を持続感染させるヒト化マウス実験系を確立した。これらの実験系が確立したことで、いよいよ臨床検体とマウスモデルを用いてHTLV-1感染による慢性炎症形成機序の解析が可能になった。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに、多くの抗HBZモノクローナル抗体を作製してHBZ蛋白質の高感度な検出・定量系を確立することができた。in vivoにおけるHBZ蛋白発現がきわめて微量であることから、これまでは臨床検体を用いたHBZ蛋白質の検出は困難であったが、今回高感度かつ定量的な検出系が構築できたことから、臨床検体を用いてHTLV-1関連疾患におけるHBZ蛋白質の発現と慢性炎症病態との関連を解析することが可能になったと考えている。一方で、HTLV-1を持続感染させるヒト化マウス実験系を確立した。最終年度は、いよいよ臨床検体を用いたHTLV-1関連疾患の病態とHBZ蛋白質発現の関連解析と、HTLV-1感染ヒト化マウスモデルを用いた慢性炎症形成過程におけるHBZ蛋白質の機能解析を行いたい。
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