研究課題
AIDSの原因ウイルスであるHIV-1の増殖・複製は宿主因子由来たんぱく質により正または負に制御されている.また、宿主側因子による宿主防御機構も考えられる。従って既存の抗ウイルス剤とは全く異なる作用機序を有するHIV-1治療薬の開発には、ウイルス複製を詳細に解明し、HIV-1複製を負に制御する新たな因子を同定する必要がある.本研究では特に細胞内で多彩な機能を発揮する宿主因子・熱ショックタンパク質によるウイルス複製制御機構を明らかにし、HIV-1による感染・増殖を是正する方策を探る。平成24年度において、Hsp70がvifによるAPOBE3G(APO3G)の分解を制御することで, HIV-1の感染性が抑制されることを明らかにした。平成25年度はHsp70によるAPO3G依存的なHIV-1感染抑制効果および内存性 APO3G発現T細胞におけるvifのAPO3G分解に対するHsp70の分解抑制効果の解析を行ったところ、Hsp70はHIV-1粒子へのAPO3Gの取り込みを促進し、APO3G依存的にHIV-1感染性を抑制した。 さらに、内在的にAPO3Gを発現している細胞においてもHsp70がvifによる APO3Gの分解を抑制することを確認した。最終年度である平成26年度は前年度までの知見を基に、既存の抗HIV薬とは異なる作用点をもつ新規抗HIV-1創薬として宿主因子Hsp70の発現を誘導する低分子化合物の開発へと展開した。その結果、プロスタグラジン類に属するプロスタグラジンA1が宿主因子Hsp70を誘導し、HIV-1感染細胞でもAPO3Gの分解を抑制し、APO3GのHIV-1粒子への取り込みを促進することで、HIV-1の感染性が著しく減弱することを明らかにした。最終的に本研究では、既存の抗HIV薬とは異なる作用点をもつ新規抗HIV-1薬としてプロスタグラジンA1の開発に成功した。
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