研究課題/領域番号 |
24590560
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
村木 靖 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00241688)
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研究分担者 |
大桑 孝子 金沢医科大学, 医学部, 助教 (20460347)
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90229245)
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キーワード | C型インフルエンザウイルス / CM2 / packaging / uncoating / 翻訳後修飾部位 / 量体形成 / イオンチャネル |
研究概要 |
C型インフルエンザウイルスの第二の膜蛋白質CM2は、115個のアミノ酸から成るIII型の膜蛋白質である。C型インフルエンザウイルス様粒子(VLP)を用いた研究で、CM2はpackagingとuncoatingの過程に関与することが明らかとなった。本研究の目的は、この事実を組換えC型インフルエンザウイルスを用いて証明すること、および、CM2のもつイオンチャネル活性と上記の過程の関連を明らかにすることである。 まず、CM2の翻訳後修飾部位に着目し翻訳後修飾を欠くCM2をもつ組換えウイルスを解析した。パルミチン酸化を欠く組換えC型ウイルス(名称:rC65A)は野生型と同様の増殖能を示した。一方、糖鎖付加部位を欠損した組換えC型ウイルス(名称:rN11A)の増殖能は野生型よりも劣っていた。またrN11A粒子とその感染細胞の解析で、CM2はpackagingとuncoatingの両過程に関与することを証明した(以上のデータは公表済)。 CM2は細胞膜表面で4量体を形成し、イオンチャネル活性を有するようになる。CM2の膜貫通領域がイオンの通り道を形成するためである。すなわち量体形成ができないCM2はイオンチャネル活性を失うものと考えられる。そこで本年度は、量体形成に関与する細胞外領域の3つのシステイン残基の全てを変異させたCM2(名称CM2-C1620A)をもつ組換えC型ウイルスを作製し、解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
115個のアミノ酸から成るCM2の細胞外領域は、N端の23個のアミノ酸である。その1,6,20位にあるシステインがCM2の量体形成に関与する。本研究では、これらのすべてをアラニンに変異させたCM2をもつ組換えC型ウイルス(rCM2-C1620A)を作製し、解析した。 細胞表面での変異蛋白CM2-C1620Aの発現量は野生型CM2のほぼ10%であった。また細胞内およびウイルス粒子内でCM2-C1620Aの2量体形成はみられたが4量体は検出限界以下であった。CM2の量体形成はCM2自身の効率の良い細胞内輸送に必要であることを示す。 変異蛋白CM2-C1620A をもつVLPを作製した。VLP内のゲノム量は野生型の30%程度であり、VLP感染細胞でのレポーター遺伝子の発現量も低下していた。 これらのことから、CM2の量体形成は効率の良いウイルス増殖に必要とされること、CM2の量体形成がpackagingとuncoatingに関与することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析でCM2がpackagingとuncoatingに関与することが明らかとなった。しかしCM2のイオンチャネル活性とウイルス増殖との関連を示すためには更なる解析が必要である。細胞表面での変異蛋白CM2-C1620Aの発現量が野生型CM2より劣っていたため(上記)、CM2-C1620Aの発現量の低さ上記の過程に影響を与えた可能性があるからである。 CM2のイオンチャネル活性はCM2の膜貫通(TM)領域に担われている。そこで本年度はCM2のTM領域をC型インフルエンザウイルスのHEF糖蛋白のTM領域に変異させた変異CM2(名称CHC)をもつ組換えウイルス(名称rCHC)およびCHCをもつウイルス様粒子(CHC-VLP)を作製し、下記の項目について解析する予定である。1)rCHC感染細胞内における各種のウイルス蛋白の合成と輸送、2)rCHC粒子やCHC-VLPを構成する蛋白質の量比、3)CHC-VLP感染細胞内におけるレポーター遺伝子の発現。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた消耗品分の予算を抑えられたため。 新たに導入した変異がウイルス遺伝子のsplicingを抑制することが判明した(データ未発表)。繰り越し分はこの機序を解明するための経費に充てる予定である。
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