研究課題
C型インフルエンザウイルスの第二の膜蛋白質CM2は、115個のアミノ酸から成る膜蛋白質である。ウイルス様粒子を用いた研究でCM2はゲノムの取り込みpackagingと脱殻uncoatingに関与することが明らかにされた。本研究の目的は、組換えC型インフルエンザウイルスを用いてこのことを証明し、さらにCM2のもつイオンチャネル活性がこれらの過程に関与するか否かを明らかにすることである。平成24年度と25年度に行なったCM2の翻訳後修飾部位を変異させた組換えC型ウイルスの解析で、CM2がpackagingとuncoatingに関与することが明らかとなった。第1の目的が達成されたことになる。平成26年度は、第2の目的を達成するために、組換えC型ウイルスC1620Aを作製した。C1620Aの増殖能は野生型ウイルスより10倍劣っていた。しかし、ウイルス感染細胞表面での変異蛋白CM2-C1620Aの発現量が野生型CM2より減少していたため、この発現量の低下が非効率的なC1620Aウイルスの増殖に影響した可能性が考えられた。さらに組換えC型ウイルスCHCを作製した。CHCは、CM2のイオンチャネル活性を担う膜貫通領域をウイルスのHEF糖蛋白の膜貫通領域に置換したウイルスである。CHCウイルスの増殖能は野生型ウイルスより10倍劣っていた。しかし、1) CHCウイルスのM遺伝子のsplicing効率が低下し、感染細胞内で大量の変異CM2が合成されていた、2) 1)の結果として大量の変異CM2がウイルス粒子に取り込まれており、粒子の形態も野生型とは大きく異なる多形性を呈していた。このように、M遺伝子のsplicingを担う領域の候補が明らかになった。今後はCM2のチャネル活性を担うアミノ酸やCM2のチャネル活性を阻害する化合物を明らかにする必要があると考えられる。
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