研究課題/領域番号 |
24590561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
河本 聡志 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60367711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ロタウイルス / リバースジェネティクス / VP4 |
研究概要 |
エンベロープウイルスの多くは、表面スパイク蛋白質が宿主プロテアーゼによって切断活性化されて感染性を獲得する。このため、宿主プロテアーゼによる表面スパイク蛋白質の切断は、多くのエンベロープウイルスの病原性獲得に深く関わっている。非エンベロープウイルスであるロタウイルスも外殻スパイク蛋白質VP4がトリプシンでVP8*とVP5*に切断活性化することで感染性を獲得する。VP4上のトリプシン切断領域には高度に保存された非連続の3個のアルギニン残基(R231、R241、R247)が存在し、異なる感受性でトリプシンにより切断される。発現蛋白質を用いた解析から、ロタウイルス感染性の獲得にはR247の切断だけで十分であり、残る2個のアルギニン残基の切断はロタウイルス感染には必要ではないと推測されている。しかし、全てのアルギニン残基はロタウイルス間で高度に保存されていることから、ウイルス感染において何らかの生物学的意義があるとも推測されてきた。今年度は、各アルギニン残基を単独あるいは同時にヒスチジン残基またはリシン残基に置換した組換えロタウイルスの作製を進めてきた。アルギニン残基とリシン残基を各々特異的に切断するアルギニルエンドペプチダーゼおよびリシルエンドペプチダーゼを用いることで、各残基における切断の重要性を実際のウイルスで明らかにできると考えている。これまでのアルギニルエンドペプチダーゼを用いた解析では、ロタウイルス感染性の獲得にはR247における切断が必須であるが、残る2個のアルギニン残基(R231およびR241)における切断は必須ではない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちが世界に先駆けて開発に成功したロタウイルスにおけるリバースジェネティクス系はヘルパーウイルスを必要とするために、組換えロタウイルス作製の効率の低さが問題であった。私たちは、組換えウイルスの選択条件として、従来の中和モノクローナル抗体 にRNAiシステムを組み合わせることで効率を向上させることに成功した。この改良したリバースジェネティクス系を用いて短期間に以前よりも多くの組換えロタウイルスを作製することが出来るようになり、研究を効率的に進められるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に作製した組換えウイルスを中心に解析中心の実験を行う。これにより、ロタウイルス感染におけるトリプシン切断領域の重要性が分子レベルで明らかになると考えられる。一方で、現在のリバースジェネティクス系をロタウイルスのもう一つの外殻蛋白質であるVP7に応用することを精力的に試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
組換えロタウイルス作製に必要な試薬等が中心となる。具体的には、PCR試薬、シーケンシング、細胞培養試薬と器具などである。他に論文作成に関わる経費が必要となる。
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