研究課題/領域番号 |
24590561
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
河本 聡志 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60367711)
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キーワード | ロタウイルス / リバースジェネティクス系 / レオウイルス / T7 RNAポリメラーゼ |
研究概要 |
ロタウイルスのリバースジェネティクス系は、ヘルパーウイルスの利用を必要とし、cDNAのみによる系はまだ開発されていない。哺乳類オルソレオウイルス(レオウイルス)は、10本の分節二本鎖RNA(dsRNA)をゲノムとして保有し、多分節dsRNAウイルスの複製機構および病原性を解析する上で優れたモデルである。近年、cDNAのみから感染性レオウイルスの作製を可能にするリバースジェネティクス系が開発され、従来の系では困難であった任意のウイルスゲノム改変を可能にした。ロタウイルスのリバースジェネティクス系の改良にあたり、レオウイルスの系はそのモデルとなり得る。T7 RNAポリメラーゼを発現している培養細胞にレオウイルスゲノムをコードするT7プラスミド(T7 RNAプロモーター下流に目的遺伝子とD型肝炎ウイルスリボザイム配列を配置)を導入することで、感染性レオウイルスを作製できる。これまで、T7 RNAポリメラーゼの供給は、組換えワクシニアウイルスrDIs-T7pol株あるいはBHK-T7細胞株の使用に限られてきた。今年度は、さらに幅広く応用できるT7 RNAポリメラーゼ発現プラスミドを用いたレオウイルスのリバースジェネティクス系の開発を試みた。レオウイルスをコードする10個のT7プラスミドとT7 RNAポリメラーゼの発現プラスミド(pC-T7pol)を共導入したL929細胞では、ウイルス量は少ないものの、組換えレオウイルスが回収された。次に、インターフェロン産生能が欠損しているBHK-21細胞にこれら11個のプラスミドを共導入したところ、組換えレオウイルスの回収効率は著しく上昇した。こうして、これまで報告されていない、T7 RNAポリメラーゼ発現プラスミドを用いたレオウイルスのリバースジェネティクス系が確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちが世界に先駆けて開発に成功したロタウイルスにおけるリバースジェネティクス系はヘルパーウイルスを用いるので、回収ウイルスから組換えウイルスを単離するための強力な選択条件が必要であり、変異導入で増殖能が低下した変異ウイルスの回収は困難である。また、目的とする遺伝子によってはその選択条件が存在しない。そこで、ヘルパーウイルスフリーでcDNAのみから感染性ウイルスの作製する系の開発を目指している。今回、ロタウイルスと同じレオウイルス科に属するレオウイルスをモデルとし、これまで報告されていないT7 RNAポリメラーゼ発現プラスミドを用いたリバースジェネティクス系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
従来のヘルパーウイルスを用いるロタウイルスのリバースジェネティクス系をVP4遺伝子(外殻スパイク蛋白質VP4をコード)に応用し、VP4が関与するロタウイルス感染過程の各段階を実際のウイルスで解析する。また、この系の選択条件を改良することで、もう一方の外殻蛋白質であるVP7と非構造蛋白質NSP5におけるリバースジェネティクス系の開発を目指す。一方で、ヘルパーウイルスを必要とせず、cDNAのみから感染性ロタウイルスを作製するリバースジェネティクス系の開発を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、昨年度までに準備したプラスミドおよび試薬を用いた実験が主であったために、新たなプラスミド構築とそれに伴うシーケンス解析の回数が少なく、当該助成金が生じた。 次年度は、新たに多数のプラスミドを構築する予定であり、それに伴う各種試薬類やシーケンス解析に翌年度分として請求した助成金を合わせて使用する。
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