研究課題/領域番号 |
24590562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 順一 関西医科大学, 医学部, 教授 (40181341)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HTLV-1 / ATL / マウスモデル / CD25 |
研究概要 |
HTLV-1感染ヒト化マウスで再現されたATL様病態の発現過程において想定されたTax発現CD25陰性感染CD4T細胞クローンのTax陰性CD25陽性腫瘍増殖性細胞への転換機構を明らかにする目的で、非感染CD4T細胞および感染CD25陰性あるいは陽性CD4T細胞における遺伝子発現の相違をcDNAマイクロアレイにて解析した。 その結果、HTLV-1感染によりグランザイムB遺伝子の発現が100倍以上に、TSLC-1およびCD70の遺伝子発現が10~20近く上昇することが明らかとなり、これまでATL細胞において報告されている制御性T細胞あるいは活性化T細胞としての形質が、同マウスモデルのATL様細胞で確認された。さらに、これらの発現は全てCD25の発現とともに2倍近く上昇し、腫瘍性増殖との関連が示唆された。 また、近年、腫瘍細胞ゲノムDNAへの点突然変異導入における役割が報告されているシチジンデアミナーゼAPOBEC3Bの遺伝子発現が、HTLV-1感染により、CD25陰性感染細胞で17倍、CD25陽性感染細胞では34倍上昇しており、同遺伝子産物のATL発症過程における宿主遺伝子突然変異への関与が注目される。 一方、T細胞の分化・増殖における調節機能が知られるBATF3,C/EBP,TCF4, WNT5B等の転写因子遺伝子の発現が、CD25の発現に伴い7~8倍上昇したことから、Tax発現の抑制をはじめとする感染細胞の形質転換との関連が示唆された。また、末梢性T細胞リンパ腫細胞に特徴的に発現することが近年明らかとなった、チロシンキナーゼSYKの発現が、感染細胞におけるCD25発現の陽性転化時に20倍近く上昇していることから、腫瘍増殖性獲得との関連および標的治療の対象として今後の解析が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、CD25陰性およびCD25陽性の感染CD4T細胞のNOG-SCIDマウスへの移植経代をおこない可移植性の比較および移植細胞の表面抗原解析をおこなう予定であったが、所属大学全体の移転に伴い、動物施設の利用期間が予想以上に短期間に制限されてしまったため、移植マウスの長期飼育を必要とする当該実験の年度内実施は断念せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の解析から、HTLV-1感染により宿主ゲノムの点突然変異に関与するAPOBEC3Bの発現上昇が明らかとなったことから、c-MYC等、感受性の遺伝子塩基配列に焦点を当て、同一感染個体におけるCD25陰性およびCD25陽性感染CD4T細胞から調整したゲノムDNAを用いて、導入点突然変異の有無と頻度を比較し、ATL発症過程におけるAPOBEC3Bの関与を明らかにする。同時に、これらの細胞を直接、あるいはin vitroで不死化後、SCIDマウスに移植経代し、表面抗原や染色体の変化に加え、経代前後の突然変異の頻度を比較することで、時間依存的な変異の蓄積を検討する。新動物施設は平成25年4月より稼働を開始するため、平成25年度前半で感染マウスを作製し、平成25年度後半から26年度にかけて移植実験およびゲノム解析をおこなう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大半をNOG-SCIDマウスの購入(約60万円)および細胞表面抗原解析(約20万円)やゲノム解析(約20万円)を中心とする消耗品購入費用に充て、cDNAおよびDNAメチル化マイクロアレイの受託解析にも一部用いる予定にしている(約20万円)。また、平成25年度は研究成果を、ウイルス学会等国内の学会に加え、国際学会(モントリオール)にて発表する計画である(約30万円)。
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