研究課題
HTLV-1感染ヒト化マウスで再現されたATL様病態の発現過程において、Tax発現CD25陰性感染CD4T細胞からTax陰性CD25陽性CD4T細胞へのクローンレベルでの形質転換が想定されたことから、これら細胞間の腫瘍増殖性の相違を明らかにする目的で、免疫不全NOGマウスにおける腫瘍形成能を比較検討した。同一のHTLV-1感染ヒト化マウス脾臓より分離・精製したそれぞれ10v5個のCD25陰性(ウイルス感染率[プロウイルスロード;PVL]約30%)あるいはCD25陽性CD4T細胞(PVL約100%)をNOGマウス腹腔内に移入したが、何れも腫瘍細胞の増殖を観察できなかった。そこで、同数の細胞をNOGマウス脾臓内に移植したところ、 CD25陽性CD4T細胞を移植した場合のみ感染細胞の腫瘍性増殖が観察された(3匹中3匹: 3/3)。この結果は、HTLV-1感染CD4T細胞のCD25陰性から陽性への転化にともない腫瘍増殖性が獲得されたことを強く示唆する。しかし、末梢血では感染細胞数が白血病型の1/10以下に維持されるがリンパ節の肥大が見られるリンパ腫様の病態を示したHTLV-1感染ヒト化マウス脾臓より分離したCD25陽性CD4T細胞(PVL約100%)を脾臓に移植しても腫瘍細胞の増殖は得られなかった(0/2)ことから、CD25の陽性転換に加えて増殖のニッチ形成に関与する形質の獲得が脾臓中での腫瘍性増殖に関与している可能性が示された。今後、NOGマウス移植前後のHTLV-1感染CD25陽性CD4T細胞における遺伝子発現やサイトカイン発現プロファイルを比較することで、腫瘍増殖性獲得に関与する因子の同定に繋がると期待される。
2: おおむね順調に進展している
HTLV-1感染ヒト化マウス脾臓内のCD25陰性あるいは陽性CD4T細胞のNOGマウスへの移植において、当初、予定していた腹腔内での移植では腫瘍増殖が観察されなかったため計画に遅延が生じたが、移植部位を脾臓に代えることで、腫瘍増殖性におけるCD25陰性細胞とCD25陽性細胞の差異を示すことが出来た。
CD25の陽性転換のみでは腫瘍増殖性の獲得に到らないことが新たに明らかになったことから、NOGマウスへの腫瘍経代前後の遺伝子発現の変化を解析することで腫瘍化に関わる遺伝子候補の特定に繋がると考えられる。そこで、HTLV-1感染ヒト化マウス脾臓より分離・精製したHTLV-1感染CD25陽性CD4T細胞のNOGマウス脾臓内に移植により生じた腫瘍のNOGマウス脾臓内での経代を試み、各段階での腫瘍細胞のcDNAマイクロアレイ解析を行うことで腫瘍特異的に発現する遺伝子を同定する。また、遺伝子を特定できた場合、これらのゲノムレベルでの変異の有無を解析する。
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