ATL様病態が再現されたHTLV-1感染ヒト化マウス脾臓より分離したTax発現CD25陰性感染CD4T細胞とTax陰性CD25陽性CD4T細胞の腫瘍原性の相違を明らかにするため、免疫不全NOGマウス脾臓内に移植したところCD25陽性細胞のみ腫瘍を形成したが、腫瘍細胞中に移植前(プロウイルスロード:PVL約100%)に最大の占有率(20%)を示した感染クローンは検出されず、また感染細胞のPVLが400~900%を示したため、クローン解析は不可能であった。腫瘍を形成した感染細胞をさらにNOGマウス脾臓内に経代移植を試みたが、腫瘍は形成されなかったことから、多重感染により細胞の造腫瘍性が変化したと考えられた。 そこで、HTLV-1感染CD4T細胞における宿主遺伝子変異の有無をマイクロアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)で検討したが、移植に供した造血幹細胞と造腫瘍性を示したCD25陽性感染CD4T細胞間で、T細胞受容体遺伝子領域以外での相違は検出されなかった。また、次世代シーケンサーを用いた発がん遺伝子パネルの変異解析もおこなったが、有意な塩基配列上の差異は検出できなかった。これらの結果は、Tax発現CD25陰性からTax陰性CD25陽性への転換をともなうHTLV-1感染CD4T細胞における造腫瘍性の獲得は、ゲノムレベルでの変異ではなく、エピゲノミックな修飾による可能性を強く示唆している。 一方、Tax陰性CD25陽性CD4T細胞もex vivoで培養することにより、Tax発現CD25陰性感染CD4T細胞と同様、Taxの発現が再活性化されたが、感染細胞当たりのTax発現量はCD25陰性細胞と比較して有意に低かった。この事実は、CD25陽性CD4T細胞におけるHTLV-1プロウイルスの発現抑制がエピゲノミックな修飾に依っている可能性を支持している。
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