• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

潜伏感染EBウイルスゲノムの宿主染色体付着機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24590567
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

神田 輝  愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍ウイルス学部, 室長 (50333472)

キーワードEBウイルス / EBNA1 / 染色体 / ヌクレオソーム
研究概要

EBNA1蛋白質のN末端側の二ヶ所に分かれて存在する「染色体結合ドメイン(chromosome binding domain, CBD)」には計24個のアルギニン残基が存在し、塩基性ドメインを形成している。平成24年度の研究において、これらアルギニン残基全てを(中性アミノ酸である)アラニンに置換した「アラニン置換体」を作製すると、EBNA1蛋白質の染色体結合能が失われることから、これらのアルギニン残基が染色体結合において重要性であると結論した。そこで本年度は、アルギニン残基を同じ塩基性アミノ酸であるリシンに置換した「リシン置換体」を作製することで、「アルギニン残基であることが重要なのか、それとも塩基性アミノ酸であることが重要なのか」を調べた。その結果、24個すべてのアルギニンをリシンに置換しても、EBNA1蛋白質の染色体結合能は維持された。また「アラニン置換体」、および「リシン置換体」のoriPミニプラスミド維持能を調べたところ、アラニン置換体はプラスミド維持能を示さないが、リシン置換体は野生型EBNA1蛋白質(ただしGAリピートは欠損するもの)とほぼ同等のプラスミド維持能を示すことを明らかにした。さらにEBNA1蛋白質の染色体結合ドメインの配列に由来する合成ペプチドと再構成ヌクレオソームとの結合をゲルシフトアッセイにより調べた。その結果、野生型EBNA1由来のペプチドおよびリシン置換体由来のペプチドはヌクレオソーム結合能を示す一方で、アラニン置換体由来のペプチドは結合能を示さなかった。以上の結果より、EBNA1蛋白質の染色体結合には、塩基性アミノ酸が集中する「塩基性ドメイン」と染色体ヌクレオソームとの間の静電気的相互作用が重要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EBNA1蛋白質の染色体結合ドメインにおいて、塩基性アミノ酸が集中して存在していることが一義的に重要であることを初めて明らかにした。またEBNA1蛋白質由来のペプチドと再構成ヌクレオソームの結合を調べる新規アッセイ系を用いて、EBNA1蛋白質とヌクレオソームとの相互作用は静電気的な相互作用であることを示した。以上の結果を原著論文として発表した(J Biol Chem, 2013年8月16日号表紙)。

今後の研究の推進方策

①既に樹立したヒストンH2B-GFP融合蛋白質およびEBNA1の染色体結合ドメイン-mCherry融合蛋白質(CBD-mCherry)の両者を安定発現するHeLa細胞を用いて、機能既知の標準阻害剤セット、さらに他の寄託化合物ライブラリーを添加することで、CBD-mCherry蛋白質の染色体結合を特異的に阻害し、H2B-GFP蛋白質の局在に影響しない低分子化合物を蛍光顕微鏡下でスクリーニングする。
②EBNA1蛋白質変異体をコードする組換えEBウイルスの作製をめざして実験系の改良を行っている過程で、EBウイルス感染上皮細胞においてウイルスのコードするマイクロRNAが宿主遺伝子の発現制御を行うという興味深い実験結果を得た。そこで一部研究計画を変更し、ウイルスマイクロRNA遺伝子を欠損する組換えウイルス作製により、ウイルスマイクロRNAによる宿主遺伝子発現制御機構の解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

購入を予定していた消耗品について、一部別財源により賄われたため、その分の繰越金が発生した。
平成26年度は、平成25年度の繰越分もあわせて使用する予定である。内訳としては、国際学会(アメリカ)への参加旅費(約30万円)、国内旅費(神戸、横浜2回)(約30万円)、および論文投稿料(約10万円)、マイクロアレイ解析の外注費用(約50万円)、さらに各種実験の消耗品の購入(約70万円)にあてる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Interaction between basic residues of Epstein-Barr virus EBNA1 protein and cellular chromatin mediates viral plasmid maintenance.2013

    • 著者名/発表者名
      Teru Kanda
    • 雑誌名

      J Biol Chem

      巻: 288 ページ: 24189-24199

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.491167.

    • 査読あり
  • [学会発表] Roles of BART microRNAs in EBV-infected epithelial cells.

    • 著者名/発表者名
      Teru Kanda
    • 学会等名
      6th International Symposium on Nasopharyngeal Carcinoma
    • 発表場所
      Hilton Istanbul (Istanbul, Turkey)
  • [学会発表] EBウイルス感染上皮細胞におけるウイルス由来マイクロRNA発現の意義

    • 著者名/発表者名
      神田輝
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
  • [学会発表] EBウイルス由来マイクロRNAによる上皮細胞特異的因子の発現制御

    • 著者名/発表者名
      神田輝
    • 学会等名
      第61回日本ウイルス学会学術総会
    • 発表場所
      国際会議場(神戸)
  • [備考] 愛知県がんセンター研究所 腫瘍ウイルス学部

    • URL

      http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/ri/01bumon/06shuyo_uirusu/index.html

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi