研究課題
ヒトAPOBEC3ファミリー(AとB、C、D、F、G、Hの7種)は、一本鎖に対する特異的な核酸結合タンパク質であるとともに、ポリヌクレオチドシチジン脱アミノ化酵素である。レトロウイルス複製やレトロトランスポジションにおいて、逆転写反応を阻害することが知られている。APOBEC3 による逆転写・複製に対する抑制機序には、酵素活性依存的なものと非依存的なものが混在する。本年度では、ウイルス複製における逆転写反応阻害効果において、APOBEC3 ファミリー異なる核酸結合能と酵素活性、多量体形成能がどのように関与しているのか比較解析した。まず、酵素活性と多量体形成能がないヒトAPOBEC3Cと酵素活性をもつ他の霊長類APOBEC3C とのキメラ変異体を作製することにより、4残基の変異が原因であることを見出した。さらに、これらの残基に変異導入し、人為的に酵素活性をもつヒトAPOBEC3C (rA3C)を作製した。このrA3C の組換えタンパク質は野生型のAPOBEC3Cと同様に多量体形成能をもたなかった。さらに、rA3C は野生型のAPOBEC3C と同等の抗ウイルス作用スペクトルを有していた。以上のことから、APOBEC3 の抗ウイルス活性は、多量体形成能と強く相関し、酵素活性は必ずしも必須ではないことが考えられた。一方、APOBEC3H (II型)は多量体形成能をもち、強い抗HIV作用を示す。米国の研究者との共同研究により行われた研究によって、その分子機序として、酵素活性非依存的な逆転写伸長反応阻害が重要であることを見出した。酵素活性不活型 (E56A) でも野生型と同等の抗ウイルス効果を示すことを報告した (Retrovirology12:3, 2015)。以上のことから、核酸結合および結合に誘導される多量体形成能というAPOBEC3 タンパク質の特異的な生化学的特性が強力な抗ウイルス作用機序に深く関与することが明らかになった。
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