研究課題/領域番号 |
24590573
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
坂本 明美 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90359597)
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研究分担者 |
徳久 剛史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20134364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メモリーT細胞 / CD8T細胞 / Bcl6 / 転写因子 / 免疫記憶 |
研究概要 |
メモリーCD8T細胞の分化機構を明らかにするために以下の研究を行った。 1.メモリーCD8T前駆細胞におけるBcl6発現の量的解析: OVA特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウス(OT1 Tg)にOVA遺伝子導入ワクシニアウイルス(VV-OVA)を感染し、抗原特異的CD8T細胞の活性化を誘導後7日において、KLRG1陰性メモリーCD8T前駆細胞とKLRG1陽性エフェクターCD8T細胞分取し、転写因子の発現量を定量PCRで比較した。その結果、Bcl6がメモリーCD8T前駆細胞に高く発現し、分化に機能している可能性が示唆された。 2.メモリーCD8T前駆細胞分化におけるBcl6の役割の解析: (OT1xBcl6)doubly(Tgマウスと、OT1 TgマウスをLy5.1マウスに移入後免疫した結果、Bcl6はメモリーCD8T前駆細胞の分化を正に制御していることが明らかになった。近年、IL-2刺激がエフェクターCD8T細胞分化を誘導することが示された。そこで (OT1xBcl6)doubly Tg、OT1 TgをLy5.1マウスに移入後免疫してCD25の発現を解析した。その結果、Bcl6がCD25+細胞の分化もしくはCD25の発現を負に制御していることが明らかになった。さらに、CD25とIL-2の遺伝子にBcl6結合領域が存在することを明らかにし、ChIP assayでBcl6の結合を確認した。 以上から、Bcl6はメモリーCD8T前駆細胞分化を正に制御し、その分子機構として活性化後のCD8T細胞におけるCD25とIL-2発現を負に抑制していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bcl6はメモリーCD8T前駆細胞分化を正に制御すること、およびその分子機構のひとつとして活性化後のCD8T細胞におけるCD25とIL-2発現を負に抑制していることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
メモリーCD8T前駆細胞分化におけるBcl6を介した分子機構の解析をおこなう 1. CD8T細胞におけるmTOR活性化の評価:メモリーCD8T前駆細胞分化にT細胞レセプターとCD28に対する刺激後のmTORの活性化が関与している。すなわち、mTORの活性化が強い細胞がエフェクターCD8T細胞になり、弱い細胞がメモリーCD8T前駆細胞に分化する。また、これらの活性化の強度は共存するサイトサインの種類と量で調整されている。そこで、Bcl6遺伝子改変マウスのCD8T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体とで刺激し、mTORのリン酸化を評価する。すでに、高濃度IL-2やIL-15添加時にBcl6-KO CD8T細胞でmTORのリン酸化が強く、そのmTORC1の下流であるS6Kのリン酸化も高いことを明らかにした。この分子機構を明らかにする。 2. mTOR活性抑制によるCD8T細胞で誘導される遺伝子の解析:CD8T細胞の活性化時にラパマイシンでmTOR活性を抑制し、分化する細胞の遺伝子発現の違いをDNAマイクロアレイで比較し、mTORで調節される活性化CD8T細胞内の遺伝子を明らかにする。 3. Bcl6のメモリーCD8T前駆細胞誘導におけるmTORの役割の解析:Bcl6-KO マウスのCD8T細胞の活性化時にmTORの機能をラパマイシンで抑制し、メモリーCD8T前駆細胞分化能の低下やエフェクター細胞への分化亢進が修復できるか検証する。すでに、培養系ではラパマイシンを添加することでBcl6-KO CD8T細胞からもCD62L陽性のメモリーCD8T前駆細胞が分化することを確認している。ウイルス感染の系でもラパマイシン投与を行いメモリーCD8T前駆細胞分化における関与を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
メモリーCD8T前駆細胞分化におけるBcl6を介した分子機構の解析をおこなう。 そのためにBcl6の欠損マウスを用いて培養系での実験を行うが、マウスの数が必要になる。マウスが使用可能になり次第実験を行う。 研究費は細胞内のリン酸化抗体やシグナル伝達に関する抗体等を購入するために使用する。
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