研究課題/領域番号 |
24590573
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
坂本 明美 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90359597)
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研究分担者 |
徳久 剛史 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20134364)
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キーワード | メモリーT細胞 / CD8T細胞 / Bcl6 / 転写因子 / 免疫記憶 / mTOR / CD4T細胞 |
研究概要 |
転写因子Bcl6はリンパ球活性化後のCD25の発現を負に制御し、メモリーCD8T前駆細胞の分化に関与していることを明らかにした。一方、メモリーCD8T細胞の分化、維持にmTORを介したシグナルが関与していることが報告されている。すなわちmTORの活性化が強い細胞はエフェクターCD8T細胞に分化し、活性の弱い細胞がメモリーCD8T細胞に分化する。しかし、mTORの活性化におけるBcl6の役割は明らかにされていない。 本年度は活性化リンパ球におけるmTORの活性化を解析し、Bcl6遺伝子改変マウスを用いて、Bcl6との関連を検討した。 1. 活性化リンパ球におけるmTOR活性化の評価:野生型およびBcl6欠損マウス由来リンパ球を抗CD3/CD28抗体で刺激後、mTORの活性化をmTORC1の下流の分子であるS6Kのリン酸化をフローサイトメトリで解析し評価した。その結果、Bcl6欠損CD8T細胞、CD4T細胞とも、mTOR活性が高く、長時間維持されていることが明らかになった。 2. mTOR活性におけるサイトカインの関与の検討:mTOR活性はIL-2で誘導され、IL-15で負に制御されることがすでに報告されている。Bcl6欠損リンパ球はIL-2レセプターが高発現すること、IL-2産生も高いことを見出しているため、IL-2の刺激を抗IL-2抗体添加で抑制しBcl6欠損細胞でのmTOR活性が野生型と同程度に抑制されるか検討した。結果、野生型マウス由来リンパ球では抗体添加で活性が抑制されたが、Bcl6欠損細胞では抑制されなかった。Bcl6は検討したサイトカイン以外のmTOR調節機構にかかわっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)活性化リンパ球におけるmTOR活性化の評価の研究で転写因子Bcl6が制御に関与していることが明らかになった。 2)mTOR活性におけるサイトカインの関与の検討において、IL-2はmTORの活性化に重要であるが、Bcl6は予想に反してIL-2シグナルのみならず、異なった機序でmTORの活性化を制御している可能性が示唆され、さらに研究が展開できる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
1)mTOR活性調節におけるBcl6の役割の解明: Bcl6欠損細胞を用いてmTORシグナルにかかわる分子の活性化をフローサイトメトリもしくはウエスタンブロッティング法で解析し、野生型と異なる分子機構を明らかにする。さらに明らかになった分子におけるBcl6の関与機構を解析する。 2)メモリーT細胞分化過程におけるBcl6によるmTOR活性化の生理的意義の解析: Bcl6欠損ナイーブ細胞を野生型マウスに移入後免疫し、mTORC1阻害剤であるラパマイシンを投与して、リンパ球の分化を解析することでBcl6の機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞移入実験にはBcl6欠損マウスが数多く必要となる。このマウスは、個体を得ることが難しく少し時間がかかっている。 ウエスタンブロッティングに用いるためのBcl6欠損マウスの準備、また細胞移入実験のためのDO11.10マウス背景のBcl6欠損マウスを準備中である。実験に必要なマウスが得られ次第実験を行う。研究費はマウスの飼育、ウエスタンブロッティングに用いる抗体、フローサイトメトリによる細胞解析のための抗体等の購入に使用する。
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