研究課題/領域番号 |
24590574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳井 秀元 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70431765)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自然免疫系 / 核酸認識受容体 / 感染 / ウイルス / 病原体 |
研究概要 |
ウイルスや細菌などの感染に際し、病原体由来核酸は免疫系を強く活性化することが知られている。核酸刺激による免疫系活性化のon/off の制御を可能にするためには、核酸認識受容体を含めそのシグナル伝達機構の理解が不可欠であるが、その詳細には未だ不明な点が多い。本研究では我々が見出した核酸認識に関わる新規分子について解析を行い、生体がどのような機構において核酸を認識し、免疫系を賦活化しているか、その機構の一端を明らかにすると同時に、その制御法についての分子基盤の確立を目指している。平成24年度の検討において、以下の結果を得ている。 核酸アナログと結合する分子を網羅的に解析した結果得られた二つの分子(Nucleic acid sensor 1(NAS1) およびNAS2)について、コンディショナルノックアウトマウスを作製した。NAS1について、骨髄由来樹状細胞を用いてB-DNA刺激、TLR9刺激時におけるサイトカイン産生について検討を行ったところ、I型IFNやIL-12p40の産生が減弱することが明らかとなった。一方で、NAS2欠損細胞においても様々な核酸刺激において検討を行ったが、NAS2欠損細胞においてはサイトカイン産生において有意な差は認められなかった。これらの結果から、今後NAS1を主体に解析を行って行くことにした。NAS1がどのように核酸認識に関与しているか、抗NAS1抗体を用い、NAS1と会合する分子について免疫沈降法により検討を行ったところ、複数の分子が会合することを明らかにしている。今後、これらの分子についてその機能を検討する。また、自己免疫疾患モデルマウスとの交配を行い、検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、ウイルスや細菌などの病原体由来核酸によって活性化される自然免疫応答について、我々が見出した核酸結合性分子NASに着眼し、未だ不明な点が多い核酸認識機構について、新規シグナル伝達機構の存在も視野に入れ、検討を行うものである。本研究課題の解析に必要なNAS分子ノックアウトマウスの作製は既に完了しており、またこれらのマウス由来の細胞を用いた検討の結果、NAS1が確かに核酸による免疫応答に関与していることを突き止めている。さらに、NAS1と会合する分子についても検討を進めており、複数の分子が会合することを見出している。NAS1は定常状態では核内に存在しており、ウイルス感染に伴って、細胞質内に移行することを明らかにしており、このことは、これまで知られていなかった、核内において核酸を認識する機構が存在すること、または核内の分子が細胞質内に移行する新規シグナル/機構が存在することを示唆しているものと考えられた。さらに、NAS1遺伝子欠損マウスはHSV-1やリステリア感染に対して脆弱であることも見出しており、NAS1を介した応答が感染防御に重要であることも明らかにしている。このように、NAS1は新規核酸認識機構に関与していることを見出しており、さらにこの機構が感染応答に重要であることを見い出すことができたことから、本研究課題は順調に遂行してきているものと考えられる。一方で、NAS2のサイトカイン産生への関与が認められなかったこと、さらにNAS1がどのように核酸認識応答に関与しているのか、その機構の解明には未だ至っておらず、これらについては今後明らかにすべき課題であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、研究実施計画に従って検討を行う。特に、核酸刺激、病原体感染において表現系が得られているNAS1に着目し、解析を進める。①NAS1がどのように核酸による応答に関与しているのか、その分子メカニズの解析、②NAS1欠損マウスの感染、自己免疫疾患における役割について、その関与の分子機構、重要性について検討を進める。分子メカニズムについては、核内におけるNAS1が細胞質内に移行することから、1)核内において核酸を認識する新しい機構が存在する、または2)細胞室内において核内のNAS1のような分子を細胞質内に移行するような新しい分子機構が存在する、の2点の可能性を踏まえ、検討を進める。NAS1と会合する分子を既に複数見出していることから、質量解析などからこれらの分子の同定を進め、そのメカニズムの一端について強制発現系、遺伝子発現のノックダウン系などにより検討を行う。核酸アナログを用いた際の核酸誘導性免疫応答抑制作用にNAS1、NAS2が関与しているかどうかについても検討を行う。 また、NAS1欠損マウスについて、ウイルス感染、細菌感染時のサイトカイン産生、適応免疫応答の活性化、病原体の複製量について、細胞、個体レベルでの解析を行うと同時に、核酸を用い、オボアルブミンなど外来抗原を投与し、免疫を行った際のアジュバント効果についても検討を進める。さらに、TLR7-Tgとの交配やpristane投与時など、自己免疫疾患誘導時のNAS1、NAS2の関与についても検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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