研究課題/領域番号 |
24590576
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小内 伸幸 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (50323605)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫 / 樹状細胞 / サイトカイン |
研究概要 |
申請者は樹状細胞(dendritic cell; DC)分化に重要なサイトカイン受容体Flt3とM-CSF受容体発現を指標にしてDCサブセットのみに分化する共通DC前駆細胞(common DC progenitor; CDP)を発見した(Nat. Immunol., 8: 1207-1216, (2007))。本研究ではこの発見を発展させ、形質細胞様DC(plasmacytoid DC: pDC) C分化に重要な転写因子E2-2を高度に発現し、卓越したpDC分化能を持つ新規DC前駆細胞を発見した(Immunity doi.org/10.1016/j.immuni.2013.04.006 (2013))。この新規DC前駆細胞はin vitroクローナルアッセイにおいても、in vivoの移植実験の結果からCDPよりも傑出したpDC分化能を持っていた。この新規DC前駆細胞は高いpDC分化能と相関するようにE2-2を他の前駆細胞よりも非常に高く発現していた。また、この新規DC前駆細胞の起源を探るため多能性前駆細胞とCDPをマウス骨髄内に直接移植し3日後の娘細胞を解析した結果、新規DC前駆細胞様の細胞が分化してきた。これらのDC前駆細胞の発見は、造血系における細胞分化系譜に完全なDC分化経路図を追加する重要な研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標である、新規DC前駆細胞を同定し国際的な一流誌Immunityに受理された。さらに申請者はDC前駆細胞から各DCサブセットへの細胞運命機構を解明するため、DC前駆細胞をFlt3-ligandと他のサイトカインとの共培養実験を行い、DCサブセットへの分化能とDC分化関連転写因子の発現を定量的PCR法によって解析した。この結果、Flt3-ligandとThrombopoietin(TPO)で培養すると、Flt3-ligand単独培養状態に比べて、新規DC前駆細胞、CDP及びMacrophage and DC progenitor (MDP)からpDCへの分化が数倍に増強した。この結果と一致するようにFlt3-ligandとTPOで培養するとpDC分化に必須な転写因子E2-2の発現増強が認められた。これらの結果は、骨髄においてDC前駆細胞がFlt3-ligandに続いて第2シグナルを受けると各DCサブセットへの分化が決定あるいは増強される可能性を強く示唆しており、今後の解析が期待される。 また、申請者はヒト臍帯血由来CD34+細胞を用いてin vitroにおけるヒトDCサブセット培養条件を検討した結果、Flt3-ligandとTPOで培養するとヒトpDC、CD141+ cDC及びCD1c+ cDCの全てのDCサブセットが分化してくることを見出した。今後はこの培養条件を用いてヒトDC前駆細胞を同定したい。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はDC前駆細胞をFlt3-ligandとTPOで培養すると転写因子E2-2の発現増加に伴い、pDCへの分化誘導増強を見出した。今後は、このシグナル伝達系に関与する転写因子、分子を同定する。またcDC分化を増強するサイトカインを同定する。候補分子としてはGM-CSFやSCFが考えられる。Flt3-ligandとこれらサイトカインを加えてDC前駆細胞を培養し、DCサブセットへの分化能、転写因子の発現を検討する。 臍帯血から純化したCD34+細胞を免疫不全NOGマウスに移植し、免疫系ヒト化マウスを作製する。その後、免疫系ヒト化マウスの骨髄をサイトカインFlt3、GM-CSF、M-CSF受容体に対する抗体とCD34、CD38に対する抗体を用いて多重染色を行い、既知の幹細胞、前駆細胞とは異なる細胞集団を見つけ出し、これら細胞のDCや他の系列細胞への分化能を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの研究成果により、マウス新規DC前駆細胞を同定した。今後は、ヒトDC前駆細胞を同定するため、ヒト臍帯血よりCD34+幹細胞精製の為に各種蛍光標識された抗体を購入予定である。さらにヒトCD34+細胞の移植のレシピエントとして免疫不全(NOG)マウスを購入予定である。
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