研究課題/領域番号 |
24590577
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長井 良憲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員准教授 (30431761)
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キーワード | 免疫学 / 自然免疫 / 肥満 / 天然薬物 |
研究概要 |
1) 脂肪組織炎症における可溶型MD-1に発現と機能に関して: (a)MD-1を過剰に発現するMD-1トランスジェニック(Tg)マウス及び野生型マウスに高脂肪食を摂餌させ、脂肪組織炎症や肥満、糖尿病状態を比較解析した。MD-1 Tgマウスは野生型マウスと比べて、上記病態が増悪すると予想していたが、解析の結果、野生型マウスと同等の脂肪組織炎症、肥満、糖尿病状態を示すことが分かった(未発表データ)。(b)脂肪組織において、可溶型MD-1を産生する細胞の同定を進める予定であった。しかし、(a)の結果の通り、可溶型MD-1の過剰産生が脂肪組織炎症の病態には関与しないことが示唆されたため、可溶型MD-1産生細胞の同定は見送ることとした。 2) RP105/MD-1の発現を抑制する薬物の探索に関して: (a)天然薬物Aを脂肪細胞株またはマクロファージ細胞株に前処理し、炎症抑制効果を解析した。その結果、前処理したそれぞれの細胞で、弱い炎症抑制効果を認めた。以上から、天然薬物Aはどちらの細胞にも作用し、炎症抑制効果を示すことが示唆された。(b)高脂肪食に天然薬物Aを混餌し、野生型マウスに摂餌した。高脂肪食単独の摂餌に比べて、天然薬物Aを含む高脂肪食では、肥満、糖尿病病態が顕著に改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・MD-1 Tgマウスに高脂肪食を摂餌させ、MD-1過剰発現と肥満、内臓脂肪組織炎症、インスリン抵抗性との関係を解析した。結果は上記の通りであるが、単にMD-1を過剰発現しただけでは、メタボリック症候群の病態は増悪しないことが分かった。 ・天然薬物Aの炎症抑制作用について、脂肪細胞株とマクロファージ細胞株を用いてある程度の作用機序を見出した。H26年度も引き続き解析を行う。 ・天然薬物Aの個体レベルでの有効性を確認した。H26年度には個体レベルで有効性を示すメカニズムの解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の結果から、MD-1 Tgマウスは野生型マウスと同様に高脂肪食摂餌による肥満等の病態を示した。そのため、H26年度に予定していたMD-1 Tgマウスを用いた解析は一部行わないこととした。 1) 脂肪組織炎症における可溶型MD-1の発現と機能に関して 脂肪組織炎症における可溶型MD-1の機能を解析するために、脂肪細胞とマクロファージの共培養系にリコンビナントMD-1を添加し、炎症が増強されるかどうか、TNF-αやMCP-1を指標にRT-PCR法で解析する。リコンビナントMD-1は市販のものを使用する。また、MD-1 Tgマウス由来マクロファージと 脂肪細胞を共培養し、過剰に産生される可溶型MD-1が炎症に与える影響を同様にRT-PCR法を用いて解析する。さらにsiRNAを用いてMD-1遺伝子の発現を低下させたマクロファージまたは脂肪細胞を作製し、共培養を行う。MD-1の発現低下が脂肪組織炎症に及ぼす影響を解析する。 2) RP105/MD-1の発現を抑制する薬物の探索に関して (a) 有効な薬物の作用機序を探索するために、薬物が結合するタンパク質をデータベースを用いてインシリコ解析し、結合シュミレーションを行う。既に共同研究者との打合せを進めている。(b) 天然薬物Aが個体レベルにおいて有効性を示すメカニズムを明らかにする。脂肪組織炎症の程度をTNF-αやMCP-1 を指標にRT-PCR法で解析すると共に、脂肪組織に浸潤している炎症細胞の数を測定する。以上から天然薬物Aのターゲット細胞を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、平成25年度に計画していた研究の一部が遅延したためであり、当該助成金は平成26年度に繰り越した研究を行うために使用する。 2) RP105/MD-1の発現を抑制する薬物の探索に関して: 天然薬物Aの効果をPPARアゴニストピオグリタゾンと比較する。天然薬物Aまたはピオグリタゾンを高脂肪食に混餌し、野生型マウスに摂餌させる。肥満、脂肪組織炎症、糖尿病状態を比較解析する。
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