研究課題/領域番号 |
24590578
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
瀧 伸介 信州大学, 医学部, 教授 (50262027)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サイトカイン |
研究概要 |
好塩基球の示すIL-3増殖、生存、IL-4産生などの応答におけるIL-3受容体β鎖の構造機能連関を追求している。新生児に予備的に構築済みであったβc欠損好塩基球にIL-5Rα鎖と野生型βc鎖を同時に導入した時のみIL-4産生や好塩基球の生存が見られる(好塩基球の維持自体は内在性βIL-3とIL-3Rαによって支持される)システムは完成した。この系を用いて、IL-5誘導生のIL-4産生も内在性IL-3シグナル伝達経路と同様にFcRγおよびSykに依存していること、一方IL-5による生存シグナルはSykに非依存的であることが明らかになった。さらにβc鎖の細胞内領域を欠失する変異体はIL-4産生、生存の両方を支持できないことから、βc鎖の機能は単にFcRγ鎖をその細胞膜内ドメインでリクルートする事のみにあるのではなく、βc自体のシグナル伝達機構がIL-4産生シグナル伝達に必須であることが明らかである。さらに細胞質内Jak2結合領域であるbox1のみを持つβc鎖もIL-4産生、生存を支持できなかったことから、Jak2の活性化だけではIL-4産生シグナル伝達には不十分であり、下流シグナルの活性化が必要であることが示唆された。一方で、活性化状態にある好塩基球は、休止期好塩基球の示すIL-3応答性を失うが、抑制性細胞表面分子PIR-Bを欠損する好塩基球ではこの喪失が見られない。PIR-Bとアダプター分子FcRγを同時に欠損する好塩基球ではIL-3応答が消失するため、PIR-Bが制御するシグナル伝達経路はIL-3受容体ーFcRγ経路そのものであること、にもかかわらずやはりFcRgをシグナル伝達に用いるIgEに対する応答はPIR-B欠損によって影響されないことから、IL-3受容体下流のFcRg経由シグナルに特異的な制御機構が存在することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変異βcコンストラクトの構築が遅れ気味のため、平成24年度中に解析を予定していた追加のJak2非結合変異体の解析が遅れてたため。
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今後の研究の推進方策 |
変異体構築のための技術に関して、新たな試薬を導入したため、その効率が向上しつつあり、より多くの変異体発現のためのプラスミド構築が期待され、研究の進行が促進できるものと考えられる。変異体の作成を進めつつ、PIR-B欠損好塩基球のIL-3受容体下流シグナルについても同時に解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異体の構築に手間取っている理由で、新規の実験計画に遅れが出たため、研究費の使用が低調であった。平成25年度は、細胞培養システムによる検討を本格化するため、大量のウシ胎児血清、メディウム、サイトカインなどが必要となり、また遺伝子導入、変異体構築のために分子生物学実験用試薬を大量に消費する予定である。合わせて、本学の手当てする運営費で維持していた変異マウスの一部を本研究費で飼育維持する必要が出る。以上の目的のために次年度使用額および平成25年度の研究費を使用する。
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