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2012 年度 実施状況報告書

T細胞生存を制御するKDEL受容体の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 24590583
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

上村 大輔  大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20391922)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードT細胞 / 恒常性
研究概要

T細胞恒常性をより詳細に理解するために、変異剤ENUを用いてマウス個体に突然変異を導入し、T細胞に異常を持つ個体をスクリーニングした。その結果、ナイーブT細胞数が激減している変異個体(T-Redマウス)を得た。このT-RedマウスはT細胞依存的免疫応答が有為に減弱している。SNP解析から、その責任遺伝子は、ER-Golgiで物質の逆輸送に関わる膜タンパク質として知られるKDEL受容体1 (Kdelr1)であった。このナイーブT細胞の恒常性破綻の分子機構を調べた。Kdelr1にはファミリー分子が存在するが、T細胞ではKdelr1とKdelr2の発現が認められ、Kdelr3はほぼ発現していなかった。Kdelr1の局在は、共焦点顕微鏡観察の結果、核の周辺にシグナルが認められた。T細胞受容体トランスジェニックマウスとT-Redマウスとの2重変異マウスはナイーブT細胞数が回復したことから、V(D)J再構成の異常を疑ったが、解析の結果、質的な変化は認められたものの、根本的にはV(D)J再構成は完了していることが判明し、DNA修復反応以外の原因もまた示唆された。転写産物の網羅的解析の結果、T-RedナイーブT細胞では統合ストレス応答(ISR)遺伝子群の発現が大きく増加していた。ISR誘導に重要な因子であるeIF2aのリン酸化もT-RedナイーブT細胞で増加していた。eIF2aのリン酸化を誘導するキナーゼ群の活性化は野生型と同レベルであった一方で、eIF2aの脱リン酸化が障害されている結果を得た。eIF2aの脱リン酸化はPP1 (protein phosphatase 1)によって担われており、実際にはPP1とKdelr1は会合することが判明した。これらのことは、Kdelr1の新たな機能としてPP1活性の制御があることを示し、それがナイーブT細胞の生存に必要であることが示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Kdelr1の異常によるナイーブT細胞の恒常性破綻の分子機構について、Kdelr1の新たな機能とともに明らかにし、論文投稿中であることから順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

Kdelr1遺伝子に異常を持つT-RedマウスのナイーブT細胞では、細胞ストレスが増加しており、生存性が悪くなっていることが示唆される。細胞ストレスを除去するような遺伝子を過剰発現させることによってT-RedナイーブT細胞の生存性が回復することを確かめ、両者の機能的なリンクを証明する。また、PP1とKdelr1との会合がPP1活性を調節する機構についても、会合ドメインを決定したり、複合体の構成因子を比較するなどして検討する。Kdelrファミリーの欠損マウスを解析して、ナイーブT細胞生存における機能的重複性を調べる。T-Redマウスは4ヶ月齢くらいまでには明らかな外見の異常は認められない。T細胞に異常をもつマウスはしばしば加齢とともに炎症などの異常を呈することがあるので、より加齢したT-Redマウスを解析し、癌化や免疫疾患などについて検討する予定である。これらによってKdel receptorのT細胞恒常性における役割とその結果生体に与える影響とを明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

T-Redマウス、Kdelr1ノックアウトマウスなどのマウス維持費、および野生型マウスの購入費、維持費に使用する。ストレス応答の程度、細胞内局在やタンパク質量を生化学的に検討する為に、抗Kdel receptor抗体、抗PP1抗体やISRに関与する分子などの抗体を購入する。また、定量的PCRやDNA抽出などに使用する一般的な市販キット、細胞や分子の状態などを計測する市販のキットや試薬などの消耗品は随時必要に応じて購入する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Disease-Association Analysis of an Inflammation-Related Feedback Loop.2013

    • 著者名/発表者名
      Murakami, M.*, M. Harada*, D. Kamimura* (*equal contribution), H. Ogura, Y. Okuyama, N. Kumai, A. Okuyama, R. Singh, J-J. Jiang, T. Atsumi, S. Shiraya, Y. Nakatsuji, M. Kinoshita, H. Kohsaka, M. Nishida, S. Sakoda, N. Miyasaka, K. Yamaguchi-Takihara, and T. Hirano.
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 3 ページ: 946-959

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2013.01.028

  • [雑誌論文] IL-6 amplifier activation in epithelial regions of bronchi after allogeneic lung transplantation.2013

    • 著者名/発表者名
      Lee, J.*, T. Nakagiri*, D. Kamimura* (*equal contribution), M. Harada, T. Oto, Y. Susaki, Y. Shintani, M. Inoue, S. Miyoshi, E. Morii, T. Hirano, M. Murakami, and M. Okumura.
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 25 ページ: 319-332

    • DOI

      10.1093/intimm/dxs158

  • [雑誌論文] Autoimmune disorder phenotype in HVCN1 gene deficient mice.2013

    • 著者名/発表者名
      Sasaki, M., A. Tojo, Y. Okochi, N. Miyawaki, D. Kamimura, A. Yamaguchi, M. Murakami, and Y. Okamura.
    • 雑誌名

      Biochemical Journal

      巻: 450 ページ: 295-301

    • DOI

      10.1042/BJ20121188

  • [学会発表] Characterization of an ENU-mutant mouse with impaired T-cell homeostasis2012

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kamimura, Jing-jing Jiang, Shunji Mitani, Naoko Ueda, Mineko Tsuruoka, Hisahiro Yoshida, Haruhiko Koseki, Toshiyuki Fukada, Hideki Ogura, and Toshio Hirano, and Masaaki Murakami
    • 学会等名
      第41回日本免疫学会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      20121205-20131007

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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