研究課題
組織に存在するマクロファージは細菌や死細胞の除去という機能を有するが、その他の機能は存在する組織により異なると考えられている。しかし、機能がことなる組織マクロファージがどのようにして分化してくるのか、その詳細なる誘導機構は不明な点が多い。脾臓に存在するRed pulp macrophageを組織マクロファージのモデル系として、組織マクロファージの分化の場、および誘導シグナルの同定を行った。脾臓および骨髄は生体内における鉄代謝を担っている重要な臓器であることに着目し、赤血球の代謝産物がRed pulp macrophageの分化を誘導する可能性を検討した。In vitroにて赤血球の代謝産物一つであるヘム(老化赤血球の代謝物質)で刺激するとSpi-cの発現が誘導され、さらにはF4/80陽性細胞が分化してきた。同時に、SpicがRed pulp macrophageと同様に鉄のリサイクルの機能を有するF4/80+VCAM1+骨髄マクロファージ(Bone marrow macrophage)分化も制御することも明らかとなった。さらに、過剰なヘムはRed pulp macrophageとBone marrow macrophageのアポトーシスを誘導するが、単球におけるSpicの発現も誘導し、Red pulp macrophageとBone marrow macrophageを分化誘導する事も明らかとなった。また、Spi-cの発現誘導はリプレッサーであるBACH1によって阻害され、ヘムはプロテアソーム依存的にBACH1を分解し、Spic転写の阻害を解除した。組織マクロファージの分化が代謝物質よって制御されていることを初めて明らかにした。
3: やや遅れている
Spi-cを発現している細胞を可視化し生体内でもその挙動を追跡が可能であるSpi-c IRES GFPマウスの解析により、Red pulp macrophageの分化誘導に重要な転写因子Spi-cの発現を制御する組織特異的なシグナル(分子)の同定に成功した。しかし、conditional knock-out マウスの作製が遅れたため、その前駆細胞の同定がまだ完了していないため。
作製した遺伝子改変マウスを用い、組織特異的マクロファージの前駆細胞の同定、および分化誘導機構の詳細なる解析をin vitroおよびin vivoにおいて進めていく予定である。
遺伝子改変マウスの作製に予定以上に時間を要し、その結果マウスの解析が遅れたため。
Spic遺伝子欠損マウス、およびSpic IRES-eGFPノックインマウスを解析するにあたり、細胞サブセットを解析するための抗体、細胞を分離してin vitroで培養するための培養機器および培地が必要である。さらに組替えDNA、および組替えタンパク質を作成するための各種試薬、培養器具が必要である。また、感染実験のために各種培養液、およびマウスの維持費が必要である。また、本研究の成果発表のための旅費およびその他校閲代金等が必要である。
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