研究課題/領域番号 |
24590586
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
錦見 昭彦 北里大学, 理学部, 准教授 (70404019)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | B細胞 / 免疫応答 / 細胞遊走 / 分化 |
研究実績の概要 |
前年度までに、DOCK2欠損マウスにおいて抗原刺激に応答した抗体産生が著しく低下していること、DOCK2欠損B細胞において抗原受容体を介したシグナルにおけるRac活性化が障害されており、免疫シナプスが正常に形成されないことを明らかにしてきた。本年度は、DOCK2欠損マウスにおける液性免疫応答の障害が、T細胞、抗原提示細胞、ストローマ細胞などにおけるDOCK2欠損ではなく、B細胞におけるDOCK2欠損が原因であることを明確にするために、抗原受容体トランスジェニックマウス由来のB細胞を野生型マウスに移入し、抗原刺激に応答した分化や局在の変化について検討した。その結果、DOCK2欠損B細胞において、抗原刺激によるクラススイッチや抗体産生細胞への分化や増殖が抑制されていること、胚中心への移行が抑制されていることが明らかになった。以上のことから、DOCK2はB細胞において、ケモカインシグナルと抗原受容体シグナルの双方において重要であることが示唆された。従来、B細胞におけるRac活性化はVavファミリータンパクが担うとされてきたが、DOCK2が抗原やケモカインの刺激に応答したシグナル伝達系におけるRac活性化のマスターレギュレーターとして機能していること、この機能が、抗原に応答したB細胞の分化増殖に不可欠な役割を担っていることが示された。また、DOCK2の機能を抑制することにより、液性免疫応答が顕著に低下することから、この分子がB細胞の異常に起因する自己免疫疾患の治療法開発にあたって標的分子となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗原受容体トランスジェニックマウス由来のB細胞を用いた移入実験により、B細胞におけるDOCK2の発現が液性免疫応答に重要であることを明確に示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
コンディショナルノックアウトにより、B細胞特異的にDOCK2を欠損したマウスを用いて抗原刺激に応答した液性免疫応答を検討し、B細胞におけるDOCK2の役割を個体レベルで詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DOCK2が他の細胞でなくB細胞で必須であることを証明するために部位特異的ノックアウトマウスの使用が有用である。当初、このマウスの作製予定はなかったが、研究期間中に入手可能となった。しかしながら、実際に本研究に使用するためには、マウスを複数回交配する必要があり、研究期間を延長する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
B細胞特異的にDOCK2をノックアウトしたマウスを用い、抗原を投与した際のB細胞の分化、増殖、局在、ならびに特異抗体産生について検討する。
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