研究課題
細胞死は大きくアポトーシスとネクローシスの二つに分類される。細胞死の際の180bpのDNA断片化はアポトーシスの指標とされている。我々はこれまで、アポトーシス時に見られるのと同様のDNA断片化がネクローシスの際にも見られることがあり、それを司っている酵素の一つがDNaseγであることを明らかにし、ネクローシスDNA断片化の概念を提唱している(Necrosis DNA Fragmentation)。生体内における意義について検証するために生体内ネクローシス誘導系である解熱鎮痛剤アセトアミノフェンの大量投与による肝細胞ネクローシスを誘導したところDNaseγ遺伝子欠損マウス(KOマウス)は野生型マウスに比べて感受性が亢進していた。この原因としては酸化ストレスが重要な要因であることが示唆されていたが、ネクローシスの原因とその制御メカニズムに関しては不明な点が多かった。昨年度までの解析の結果、ネクローシスの直接的な原因として、酸化ストレスに伴い産生される毒性の高いアクロレインが関与する可能性を見出した。またメカニズムとしては、細胞の崩壊と遊離による周辺細胞からの隔離がアクロレインの拡散を防いでいる可能性が示唆されていた。今年度は、主として電子顕微鏡を用いた解析から、KOマウスでは壊死肝細胞の崩壊が抑制され、さらに血小板の集積も減少傾向にあることが明らかになった。血小板は血中に大量に存在し、損傷部位に速やかに集積し、活性化されることで組織の損傷治癒に関与するといわれている。したがって、ネクローシスDNA断片化の意義は、死細胞の速やかな処理によるアクロレインの分散の抑制と、血小板の活性化による再生の促進にあることが示唆された。さらに、DNA断片化とならび、アポトーシスの指標として有名なクロマチンの凝集も、ネクローシスで認められることを新たに発見した。
2: おおむね順調に進展している
Necrosis DNA Fragmentationという新しい概念を提唱し、in vitro、 in vivoの解析から、死細胞の速やかな除去を促進することがその生理的意義であることを明らかにしつつある。またネクローシスの際のクロマチン凝集という新たな現象も見出している。
生体内ネクローシス誘導系である解熱鎮痛剤アセトアミノフェンの大量投与による肝細胞ネクローシスを誘導したところDNaseγ遺伝子欠損マウスは野生型マウスに比べて感受性が亢進していた。この新たな原因として血小板の凝集のならびに活性化の遅れが示唆された。今後この可能性を検証するために、生化学ならびに免疫組織学的解析を推し進めるとともに、電子顕微鏡による微視的解析により、血小板の詳細な機能解析を行いたいと考えている。またネクローシスの際のクロマチン凝集という新たな現象も見出しているが、その生理的意義とメカニズムに関しても検討していきたいと考えている。
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PLOS ONE
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10.1371/journal.pone.0080223
日本乳房炎研究会Proceedings
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