研究課題
細胞死は大きくアポトーシスとネクローシスの二つに分類される。細胞死の際の180bpのDNA断片化はアポトーシスの指標とされている。我々はこれまで、アポトーシス時に見られるのと同様のDNA断片化がネクローシスの際にも見られることがあり、それを司っている酵素の一つがDNaseγであることを明らかにしてきた。 DNase γはDNaseⅠファミリーに属する分泌蛋白で、DNaseⅠと同様に、ネクローシス細胞のDNAの分解に関与する。DNase γとDNaseⅠ、いずれの遺伝子の欠損によってもSLE様の自己免疫疾患を発症することが、最近明らかになっている。DNaseⅠは血液中の主要なDNA分解酵素であり、死細胞DNAの分解を担っていることは良く知られている。これまでの我々の研究から、DNase γも血液中に存在し、DNAの分解を担っていることが明らかになったが、DNaseⅠとDNase γの使い分けに関しては不明な点が多かった。今回、我々は血液中に存在するこの二つの酵素の活性を、わずか1 μl の血清を使って簡単に区別できる方法を確立した。その結果、次の事実が明らかになった。ネクローシス初期の、比較的クロマチンの変性が進んでいない状況にあっては、DNase γがまずリンカー部位に作用してこれを切断し、DNAを断片化する。ネクローシスが進行し、プロテアーゼが働くようになるとヒストンが分解され、DNAが漏出する。すると今度はDNaseⅠが作用し、 DNase γによって断片化されたDNAをさらに細かく分解する。すなわち、DNase γとDNaseⅠには時間・空間的な使い分けがあり、これが死細胞DNAを効率良く分解する仕組みであることが明らかになった。
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BIOMEDICAL RESEARCH-TOKYO
巻: 35 ページ: 389-395