研究課題/領域番号 |
24590588
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
片桐 晃子 北里大学, 理学部, 教授 (00322157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫動態 |
研究概要 |
1)免疫細胞の接着・遊走に重要なLFA-1 クラスター形成はRap1-RAPL-Mst1シグナルにより、細胞内からの極性輸送によって制御されている。この極性輸送に関与するRab family 分子をスクリーニングし、Rab13を同定している。Rab13の活性化をpull-down法により測定する方法を確立し、ケモカイン刺激によって活性化されることを見出した。また、Rab13優性抑制型変異体の過剰発現およびノックダウンにより、Rab13がケモカイン刺激で誘導されるLFA-1クラスター形成に必須であることが明らかになった。そのメカニズムとしてMst1との関連を検討した。Rab13-GTP型はMst1と会合してその局在化に重要な役割を果たすこと、また、Mst1は受動的にRab13に会合して前方に運ばれるだけではなく、それ自身も前方膜の形成に必須であることが明らかとなった。Rab13とMst1は協調的に機能してLFA-1クラスターが形成されると考えられる。 2)リンパ球の再循環する際に生じる高内皮細静脈(HEV)上でのarrestは、ケモカインによってLFA-1が活性化されることにより生じる。このケモカインによるLFA-1接着活性の上昇には、Rap1活性化が重要な役割を果たしている。また、arrestはβ2鎖の細胞内領域にフィラミンが抑制分子として結合しており、フィラミンをノックダウンすると、自発的なarrestが認められることがわかった。Rap1活性化によるarrest誘導の機構として、Rap1とフィラミンの相互作用が予想されたので、両者の会合を検討したところ、Rap1-GTP型がフィラミンの3番目の免疫グロブリン領域に結合することが判明した。またRap1-GTPがフィラミンに結合することでLFA-1との結合が解除されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、リンパ球の接着・遊走に重要なLFA-1クラスター形成に関与するRabを同定できた。また、免疫システムへの影響を見るために、この分子の免疫細胞特異的conditional knockout mice作製も現在順調に進んでいる。また、接着カスケードの「arrest」の抑制分子としてfilaminを同定し、これがケモカイン依存性に外れる機構としてRap1-GTPがfilamin repeat3に会合することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
LFA-1クラスターの形成にはRab13, Mst1の両方が重要であることがわかったが、それぞれがどのような役割を果たしているのか明らかにするために、Mst1及びRab13の下流標的分子を解明し、それらの相互作用を明らかにする必要がある。Mst1下流標的分子はホスホプロテオミックスにより候補を選別している。Rab13に関してはすでに上皮細胞で報告されているMICAL分子群のリンパ球での発現を確かめているので、リンパ球の接着・遊走へ関与するかどうか検討する。また、「arrest」誘導の機構として、ケモカインによって活性化されたRap1がフィラミンの免疫グロブリン領域3へ結合することが示唆された。Rap1結合領域をなくしたフィラミン変異体が、ケモカインによって誘導されるarrestを阻害するかどうか検討し、この結合がケモカインによって誘導される「arrest」に関与するかどうか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1-a)Mst1によってリン酸化される下流標的分子としてGSK3リン酸化酵素がホスホプロテオミックスより明らかになっているので、この分子のLFA-1クラスター形成及び遊走における役割を明らかにする。また、Rab13下流標的分子の可能性が示唆されているMICAL-L2に着目し、LFA-1クラスター形成及び遊走への関与を検討する。 1-b)Rab13の生体内での免疫動態制御における役割を解明するため、conditional knockout miceを作製する。Flp-FRTシステムによってNeo遺伝子をまず欠失させる。その後、CAG promotor下あるいはT細胞(CD4,lck)及びB細胞(mb-1)特異的promotor下で、cre-recombinaseを発現するtransgenic miceと掛け合わせ、すべての細胞あるいはリンパ球でのみRab13を欠失させたマウスを作製する。これらのマウス由来リンパ球及び樹状細胞のインテグリンを介する接着・遊走への影響をin vitro及びin vivoで解析する。 2)接着カスケードにおけるLFA-1依存性の「arrest」におけるfilaminの役割を明らかにする。Rap1-GTPとの結合領域を欠損させたfilamin変異体をBAF/LFA-1/l-selectin細胞に過剰発現させてケモカイン刺激によって誘導される「arrest」が阻害されるかどうか検討する。また、ケモカイン刺激によってfilaminとLFA-1の局在に変化が生じるかどうか検討する。
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