研究課題/領域番号 |
24590588
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
片桐 晃子 北里大学, 理学部, 教授 (00322157)
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キーワード | インテグリン / 動態 / シグナル伝達 / Rap1 / Mst1 / Rab13 |
研究概要 |
インテグリンLFA-1の接着は、免疫細胞の生体内移動に重要な役割を果たしている。LFA-1の接着活性は、低分子量Gタンパク質Rap1によって制御されており、このシグナルカスケードを明らかにすることは、免疫動態の制御機構の解明につながる。Rap1は下流標的分子RAPL-Mst1を介して、細胞極性を誘導するとともに、前方にLFA-1クラスターを誘導することで接着・遊走を促進することを昨年度までに報告してきた。本年度は、LFA-1の輸送に重要な働きをする分子として、小胞輸送の制御に関与するRab family 低分子量Gタンパク質の中から、Rab13を同定した。さらに、Mst1リン酸化酵素の下流標的基質として、Rab13GEF (GTP/GDP交換因子)であるDENND1Cとアクチン細胞骨格進展因子のVASPを解明し、Mst1とRab13が協調してLFA-1の接着活性を上昇させる機構を明らかにした。すなわち、ケモカイン刺激により、Rap1依存性にMst1のリン酸化酵素は活性が上昇し、DENND1Cのリン酸化が起こると、DENND1C のGEF活性が上昇しRab13の活性化が生じ、活性型Rab13-GTPはMst1と結合し、RAPLを介してLFA-1小胞をアクチン依存性に前方へ極性輸送することでLFA-1クラスターが誘導されることがわかった。また、この過程でMst1はVASPの157番目のセリンをリン酸化することでアクチン繊維の伸長・束化を促進し、LFA-1の前方輸送に貢献することが判明した。さらに、Rab13欠損マウスを作成し、このマウス由来のリンパ球はMst1の前方での集積およびLFA-1クラスターが低下しており、LFA-1依存性の接着・遊走が低下するとともに、ホーミング能が低下し、リンパ組織が低形成となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ球動態に重要なLFA-1の接着活性を制御するRap1-RAPL-Mst1シグナルの下流分子の解明を目指してきた。本年度は、Mst1リン酸化酵素の下流基質として、Rab13GEFである DENND1Cおよびアクチン伸長促進因子のVASPを同定し、Mst1が LFA-1小胞を前方へ輸送することで、リンパ球の接着・遊走を誘導している分子機構を解明した。また、本年度は作製中だったRab13欠損マウスを解析する段階まで到達し、Rab13がLFA-1活性化およびリンパのホーミングに必須であることを確かめた。
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今後の研究の推進方策 |
1)接着カスケード制御機構の解析:Rap1シグナルは、RAPL-Mst1を介さず、LFA-1の構造変化を誘導することを見出し、この機構としてLFA-1の細胞内領域に会合する細胞骨格系filaminが抑制分子として機能し、Rap1活性化がfilaminによる抑制を解除する可能性を、primaryリンパ球を用いて検討する。 a) Rap1a/b, Filamin, conditionalノックアウトマウス(すでに作製済み)由来の primaryリンパ球を、血流と同じ速さで血管内皮細胞上を流し、リンパ球と血管内皮細胞間の相互作用を、Metamorphソフトウエアを用いて定量解析する。また、生体顕微鏡を用いて、腸管リンパ節内のHEV上での接着カスケード反応を同様に解析する。Rap1a/b ノックアウトマウス由来リンパ球において、LFA-1とfilaminの会合を検討する。b) ケモカイン刺激による「arrest」にRap1活性化が必須であることを報告しているが、Rap1活性化の機構は不明であった。昨年度はケモカインの下流でRap1を活性化するRap1GEFの同定に成功したので、このノックアウトマウスを作成し、リンパ球動態への影響を検討する。またケモカインによるRap1GEFの活性化の分子機構を解明する。 2) インテグリン制御分子Rab13による免疫シナプス形成の調節:Rab13欠損マウスをOT-IITgマウスと掛け合わせており、このマウス由来のOVA抗原特異的T細胞を用いて、骨髄由来樹状細胞を抗原提示細胞として用いて、免疫シナプス形成、抗原応答への影響(増殖、サイトカイン産生)を検討する。またin vitroでplaner membrane上での免疫シナプスを観察するシステムを確立し、その動態への影響を検討する。
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