研究課題
T細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)からの第1シグナルと、補助刺激受容体からの第2のシグナルとが協調的に働くことで、制御されている。正と負の補助刺激受容体にはそれぞれ複数個が存在し、どのシグナルが強いか弱いかで、最終的なT細胞の活性化状態が決まる。よって、自己免疫疾患やアレルギーなどの誘因は、それら補助刺激受容体シグナルの不均衡だと考えられている。本研究課題は、T細胞活性化を担うシグナル伝達ユニット「TCRマイクロクラスター」を研究の基本とし、T細胞補助刺激受容体シグナルネットワークのイメージング解析を行い、機構を明らかにする。CTLA-4は、最初に発見された負の補助刺激受容体として、遺伝子欠損マウスの実験からも、絶対的なT細胞の抑制分子として知られている。一方、獲得免疫系の抑制に必須な制御性T細胞にも、CTLA-4が発現しており、制御性T細胞の抑制機能に重要であると考えられている。これまで、CTLA-4の下流には、フォスファターゼが会合する程度しか知られて折らず、機能的に必須な分子やシグナル伝達の詳細は分かっていなかった。今年度の当課題研究では、CTLA-4の下流に新たなプロテインキナーゼPKCηが結合し、制御性T細胞の機能に必須であることを明らかにした。PKCηは、CTLA-4と共にTCRマイクロクラスターが局在する「免疫シナプス」に集まり、細胞接着関連分子を活性化することで、抗原提示細胞からT細胞活性化を誘導する正の補助刺激受容体リガンドを取り除く働きがあった。免疫応答の行き過ぎの原因となるエフェクターT細胞の更なる活性化を抑える新たなメカニズムを考えられる。
3: やや遅れている
副刺激受容体ネットワークとして重要な抑制性分子CTLA-4の制御性T細胞における新たな機能を明らかにしたことは、非常に本研究の達成に貢献した。一方、当初より予定していた濾胞T細胞を用いた実験が手技上の難しさから、進まなかった。
当初計画を予定していた濾胞T細胞での実験に後れが生じ、培養試薬、プラスチック器具、実験試薬の購入を延期したため。
予定していた培養試薬、プラスチック器具、実験試薬の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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