研究課題/領域番号 |
24590591
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
多根 彰子(橋本彰子) 独立行政法人理化学研究所, 免疫シグナル研究グループ, 研究員 (10415226)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | T細胞 / 受容体シグナル / モーター分子 / 蛍光イメージング / 免疫シナプス |
研究概要 |
本研究ではTリンパ球の抗原受容体が刺激強度を翻訳するメカニズムを、T細胞受容体(TCR)活性化開始の最小単位であるTCRミクロクラスターの形状や動態制御の観点から解明することを目的としている。具体的には、新規関連分子の探索と、定量的な蛍光イメージング解析から刺激強度翻訳の分子メカニズムを明らかにする。平成24年度は、TCRシグナルに必須な既知分子の定量解析と、新規関連分子の同定を行った。 TCRミクロクラスターを詳細に解析するため、抗原提示細胞そのものではなく、ガラス上に敷いた抗原提示分子や接着分子を含む人工脂質二重膜で免疫シナプスを形成する実験系を用いた。抗原の濃度、親和性を変化させながら、蛍光ラベルしたTCRやシグナル分子を詳細に観察したところ、TCRミクロクラスターは濃度、親和性の低下に応じてクラスター数が減少し、クラスターサイズも小さくなり、クラスターの寿命も短くなることが明らかになった。TCRシグナルに必須のリン酸化酵素であるZAP70もTCRと同様の傾向を示したが、興味深い事にアダプター分子であるSLP76にはクラスターサイズとクラスターの寿命に刺激強度に依存した変化が見られなかった。この結果から、SLP76にTCRに依存しない活性化機構があり弱いTCRシグナルを助けるように働いている可能性が示唆された。 新規関連分子の探索はモーター分子ダイニンについて行った。ダイニンによるTCRミクロクラスター運搬は激強度翻訳の動態制御メカニズムであると考えられるが、ダイニンとTCRを結ぶ分子機構は明らかになっていない。そこでTCR刺激に応じてDynein light chainと共沈殿する分子を2次元電気泳動法で探索し、数個の候補分子を得た。更にマススペクトル解析を用いた分子同定に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蛍光イメージング解析に関しては予定通りだが、新規関連分子の同定については、候補分子が得られず年度を超えて試行錯誤する事も想定していた。しかし早い時期に候補分子を得る事ができたので、予想以上に速く進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
TCRと、TCRに結合するキナーゼZAP70のミクロクラスターは濃度、親和性の低下に応じてクラスター数が減少し、クラスターサイズも小さくなり、クラスターの寿命も短くなったが、アダプター分子であるSLP76にはクラスターサイズとクラスターの寿命に刺激強度に依存した変化が見られなかった。この結果から、TCRやZAP70に依存しない活性化機構があり弱いTCRシグナルを助けるように働いている可能性が示唆された。今後は、新規同定した分子を含む他関連分子に関してSLP76様の挙動を示す分子を探し、その分子クラスター組成、形成機構と意義を明らかにして行きたい。 一方で、刺激に依存したTCRミクロクラスターの数、大きさ、寿命の変化のメカニズムついては当初の予定通り、Lckキナーゼまたは受容体CD3ε鎖構造変化の関与を検証したい。Lckを介したTCR活性化の伝搬モデルでは、活性化した受容体にCD4分子を介して引き寄せられたLckが、近くの活性化していないTCRをリン酸化し活性化した。また、CD3ε鎖構造変化モデルでは、抗原が結合した受容体自体のCD3ε鎖プロリン配列を介した構造変化が伝搬し、抗原を結合していないTCRが活性化状態になったことが示されている。Lckに関してはRNA干渉、CD3ε鎖構造変化に関してはCD3ε変異体(C80G)の発現によるドミナントネガティブ効果を試みる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|