研究課題/領域番号 |
24590591
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
多根 彰子 (橋本 彰子) 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (10415226)
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キーワード | 免疫 / T細胞受容体 / シグナル伝達 / アクチン / 蛍光イメージング |
研究概要 |
本研究ではTリンパ球の抗原受容体が刺激強度を翻訳するメカニズムを、T細胞受容体(TCR)活性化開始の最小単位であるTCRミクロクラスターの形状や動態制御の観点から解明することを目的としている。具体的には、新規関連分子の探索と、定量的な蛍光イメージング解析から刺激強度翻訳の分子メカニズムを明らかにする。平成25年度は、平成24年度に同定した関連分子の解析を行った。 細胞膜に存在するTCRミクロクラスターのモーター分子ダイニンによる運搬は、刺激強度翻訳の動態制御メカニズムであると考えられる。そこでTCR刺激に応じて共沈殿する分子を解析した所、アクチン、アクチン重合制御分子であるArp2/3複合体、アクチンキャップング分子など複数のアクチン関連分子が同定された。ガラス上に敷いた抗原提示分子や接着分子を含む人工脂質二重膜で免疫シナプスを形成する分子を詳細に研究する実験系を用いた所、アクチン関連分子は極初期にクラスターを形成することがわかった。刺激抗原の濃度を下げてもアクチン関連分子クラスターの強度やクラスターの寿命は変化せず、昨年度見出したアダプター分子SLP76のZAP70キナーゼに依存しないクラスター形成と共局在して観察された。さらに、SLP76およびアクチン関連分子のクラスターは接着分子に囲まれており、小さな免疫シナプスの様な分子配置を取っている事があきらかになり、活性化初期に弱いTCRシグナルを助けるように働いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度に同定した関連分子の解析から思いがけず興味深い分子配置構造を見出すことができ、研究内容も大幅に膨らんだことから、当初の目標以上に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度までに、TCRおよびZAP70キナーゼのクラスターは刺激強度の低下に応じて数、サイズ及び寿命が減少するが、アダプター分子SLP76のクラスターはサイズや寿命に刺激強度に依存した変化をあまりしない事を明らかにした。昨年度は刺激強度を下げても見られるSLP76のクラスター形成部位に、アクチン関連分子のクラスターと、それを取り巻いて配置する接着分子を観察し、活性化初期に小さな免疫シナプスのような構造が形成されることを見出した。この構造体は弱いTCRシグナルを助けるように働いている可能性が示唆される。今後、この構造体の性質や活性化初期における役割を明らかにするするため、刺激条件の変化や、関連する分子のRNA干渉による構造体の変化を解析する。
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