研究課題
本研究では細胞膜に存在するTリンパ球の抗原受容体が刺激強度を翻訳するメカニズムを、T細胞受容体(TCR)活性化開始の最小単位であるTCRミクロクラスターの形状や動態制御の観点から解明することを目的とし、新規関連分子の探索と、定量的な蛍光イメージング解析を行った。平成26年度は前年度までに発見した“小さな免疫シナプス様構造”の機能解析を行い、論文を作成した。TCRミクロクラスターはモーター分子ダイニンによって運搬され細胞内に取り込まれるので、ダイニンはTCR刺激強度を制御すると考えられる。そこでTCR刺激に応じてダイニンと共沈殿する分子を解析した所、複数のアクチン関連分子が同定された。抗原提示細胞を模した人工脂質膜を用いて活性化部位の分子を全反射顕微鏡で観察した所、アクチン関連分子は活性化開始直後から2分以内にTCRミクロクラスターと共局在するクラスターを作り、接着分子に囲まれた小さな免疫シナプス様構造、ミクロシナプス、を作っていた。ミクロシナプスは、(1)活性化開始直後に一時的に形成され、(2)TCR刺激が弱い時には延べ形成個数が増え、(3)接着分子インテグリンの活性化を絶対的に必要とし、(4)接着班分子を集めるためにミオシンII活性を必要とし、(5) SLP76などTCRシグナル分子を引き留める事ができた。更に接着班分子のRNA干渉による発現量低下実験から、ミクロシナプスがTCRミクロクラスターの成長を促し、特に弱いTCR刺激の際にシグナル形成を大いにサポートすることを明らかにした。TCRミクロクラスターによる刺激強度翻訳のメカニズムとしては、細胞接着がTCRミクロクラスターの成長を促したことから、抗原の親和性に対するTCRミクロクラスターサイズの非線形性には、少なくとも接着によるミクロシナプス形成が影響していることが明らかになった。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Nature Communications
巻: 5 ページ: 3566
10.1038