研究課題/領域番号 |
24590602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北村 聖 東京大学, 医学教育国際協力研究センター, 教授 (10186265)
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研究分担者 |
錦織 宏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10463837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医学教育 / 専門職連携教育 / 住民参加型連携教育 / ファシリテーター養成プログラム / ファシリテーター評価表 |
研究概要 |
本研究では、転移性の高い住民参加型専門職種連携教育(Trans-Professional Education;以下TPE)のカリキュラムを開発することが目的である。 昨今の少子高齢化、疾病モデルの変化などにより、複雑化した問題が表面化し、チームでの問題解決をする機会が増えてきている。現場において円滑に連携するためには専門職種連携教育(Inter-professional Education;以下IPE)を充実化させることが課題(Lumague et al,2008)であり、さらに医療の主役である住民が参加する機会を作る必要がある。そこで本研究では、以下の3つのプロジェクトに沿ってTPEのカリキュラム開発を計画した。今年度実施した研究内容を項目ごとに報告する。 1)カリキュラム調査・フィールドワーク;海外の学会に参加し、海外で先進的に行われているカリキュラムを調査し、また英国などとのネットワークを構築した。またコンピテンシーについての文献レビューを行い、保健医療福祉連携教育学会推進委員会にて発表した。 2)TPEモデルカリキュラムの開発;東京のコミュニティーにおける住民参加型専門職連携教育のモデルカリキュラムを開発し、地域住民や医療スタッフの変化と意味付について結果の一部を学会で発表した。 3) TPE施設ファシリテーター養成プログラムの計画・ファシリテーター評価表の開発;一定の理論的背景のもと専門職連携ファシリテーター養成ワークショップを実施することができ、専門職連携ファシリテーション評価表;IPFS;inter-professional facilitation scale(Joan,2010)の日本語版の開発を実施し、結果の一部を学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、IPEの国内・国外の状況を把握したうえで、国内の文脈でIPEのモデルカリキュラムの開発のパイロットスタディを行う予定であり、おおむね進展している。以下に3つのプロジェクトの現在までの達成度を報告する。 1)カリキュラム調査;国外でのIPEの先進的な試みを行っている組織;CAIPE (The UK Centre for the Advancement of Interprofessional Education)などとネットワークを構築した。またIPEのコンピテンシーに関して文献検索によるレビューを実施し、2013年3月7日に実施された保健医療福祉連携教育学会の推進委員会で共有し、本邦のIPEのカリキュラム開発の準備状況を構築した。 2)TPEモデルカリキュラム開発;東京のコミュニティーでTPEのモデルカリキュラムを理論に基づき開発し、カリキュラムに参加者した地域住民と医療スタッフの変化とその意味づけについて参与観察とフォーカスグループインタビューにて明らかにした。結果の一部は、第44回医学教育学会と専門職連携教育の国際学会(ATBH;All together better health)にて発表した。 3)TPE施設ファシリテーター養成プログラムの計画・ファシリテーター評価表の開発;第45回 医学教育セミナーにて、研究の一環として専門職連携ファシリテーター養成のためのワークショップを実施した。現在学習者評価、プログラム評価の分析中であり、その後のフォローアッププログラムについても実施中である。また、専門職連携ファシリテーション評価表(IPFS;Interprofessional Facilitation scale)の日本語版の開発を行い、結果の一部を第44回医学教育学会で発表した。 上記を踏まえると概ね順調に研究は進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1)カリキュラム調査・フィールドワーク;海外の学会なども積極的に参加し、国外の調査を引き続き進め、並行して国内のカリキュラム調査も行う予定である。 2) TPEモデルカリキュラムの開発;初年度は東京のコミュニティーのみのカリキュラム開発と評価であったため、次年度は他の地域(診療所、地方の病院など)のフィールドを基盤としたカリキュラムの転移性についても検討していく。 3) TPE施設ファシリテーター養成プログラムの計画・ファシリテーター評価表の開発;ファシリテーター養成ワークショップの分析を終え、さらなるワークショップを学会主催で行うことを計画している。さらにワークショップ後のFacebookなどを利用したサポートプログラムの効果と意味づけについても評価する予定である。また専門職連携ファシリテーション評価表;IPFS;inter-professional facilitation scale(Joan,2010)の日本語版の妥当性を検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)カリキュラム調査;書籍や文献購入による費用と学会参加費が必要となる。学会参加に関しては、カナダのバンクーバーで実施される専門職連携の国際学会であCollaborating Across Board(CABIV)とアジア太平洋医学教育学会APMECに参加し、国外のネットワークの構築とさらなる調査を進めていく予定である。また国内においても埼玉県立大学や千葉大学をはじめ、病院や診療所にて専門職連携教育を実施しているフィールドに赴くための旅費が必要となる。 2) TPEモデルカリキュラムの開発;現時点では、諏訪中央病院や汐入診療所などをフィールドにしたモデルカリキュラムの転移性を検討する予定であり、旅費・人件費などが必要となる。 3) TPE施設ファシリテーター養成プログラムの計画・ファシリテーター評価表の開発;開発した専門職連携ファシリテーター養成のためのワークショップの助言者、事務補佐員などの人件費・旅費が必要となる。さらに、評価表の妥当性検証をすすめていくために、評価表のコピー代や郵送代、また研究参加者を学会参加者の中から募集するため、対象となる学会参加費なども適宜必要となってくる。
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