1000程度の急性期病院から収集される年間400~500万例の退院患者データから解析用大規模データベースを構築した上で、近年開発が進んでいる医療業務データを情報源とする各種のプロセス指標、アウトカム指標を計測した。それらの計測結果から、プロセスーアウトカム関係の分析、医療機関等の外的条件の関連性の分析、アウトカムーボリューム関連性の検証として、治療、手術等の実施数と各種指標の関連の検証を進めるとともに、経年変化を解析して指標の意義と妥当性を検証した。さらに、副傷病等我が国特有の疾病構造が指標計測に与える影響を考慮し、国際比較可能な指標を開発するために、傷病名、年齢等の情報を組み合わせて、分析対象患者群の重症度等のリスクを調整する手法を検討し、我が国の傷病構造を反映するリスク調整手法を開発した。 研究成果として、大規模医療業務データベースから各種評価指標を算出する手法を確立した。プロセス指標については、主にEFファイル等の診療行為明細データを用いた。具体的には、選択された薬剤と投与時期、投与期間、実施された診療行為の実施時期、実施期間等から既存の診療ガイドライン等を参考に検討を行い、周術期抗菌薬の適正使用に関する指標を作成した。併せて、急性脳卒中治療における脳卒中ケアユニットでの治療の有効性、我が国の乳がん術後再建術の提供の大きな地域差などを示し、これらの実態を指標化することの有効性を提示した。アウトカム指標については、様式1傷病名情報とEFファイル診療行為情報に基づく合併症の検出、院内死亡、退院後再入院等を候補とした。さらに術後30日、90日等の死亡率に関しては、外来患者EFファイルデータを用いて、再入院と外来受診を生存シグナルとする生存曲線解析を行った。また、我が国での病院標準化死亡比によるアウトカム評価の有用性を示した。
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