研究課題/領域番号 |
24590607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和田 泰三 京都大学, 東南アジア研究所, 特任准教授 (90378646)
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研究分担者 |
奥宮 清人 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (20253346)
松林 公蔵 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (70190494)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 事前指示書 / リビング・ウイル / 地域在住高齢者 / 事前ケア計画 / 経管栄養 / 総合機能評価 / Advance Care Planning |
研究概要 |
【目的】農村部地域在住高齢者の事前指示書の作成状況とその運用の実態を総合機能評価のなかであきらかにするとともに、終末期における経管栄養法や点滴などの経験の有無、高齢者自身の希望をあきらかにすること。 【方法】対象は、2012年5月に自記式問診票に回答した高知県T町在住の65才以上高齢者982名のうち、終末期の栄養方法に関する希望の質問に回答した587名(平均年齢76.7±7.6才 男233 女354)とした。事前指示書作成の有無とともに、胃瘻、経鼻経管栄養、末梢点滴、高カロリー輸液についてそれぞれイラストでしめしたうえで、自身の経験の有無、家族や知人がそれぞれの栄養法を受けたか否か、自身が将来経口摂取困難になった場合にどの栄養法を希望するかについて問うた。 【結果】農村部在住高齢者のうち、事前指示書の作成者は8.7%(51名)であった。問診票回答者自身の経験は、経鼻経管栄養2.0%、末梢点滴40.6%、高カロリー輸液2.2%であり、胃瘻栄養については皆無であった。家族や友人の経験では胃瘻15%、経鼻経管栄養26.9%、末梢点滴40.6%、高カロリー輸液2.2%となった。将来経口摂取困難になった場合は、50.3%のものがこれらのいずれの栄養法も望まれず経口摂取出来る範囲でのケアを希望され、ついで末梢点滴が42.5%となった。胃瘻、経鼻経管栄養、高カロリー輸液については4.3-5.1%と低い頻度であった。 【結論】農村部高齢者において胃瘻、経鼻経管栄養、高カロリー輸液について身近な経験をもつものはすくないものの、それぞれの栄養法を希望される方は少なからず存在する。日本文化に適した事前ケア計画をすすめるにあたっては、家族間での対話を促進するために比較的早期から積極的な説明が必要といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高知県土佐町と有料老人ホーム「ライフ・イン京都」において、総合機能評価検診をおこなったほか、質問紙法による事前指示書作成に関する検討を当初計画どおり実施できた。土佐町においては、総合機能評価検診時に81名の高齢者(平均年齢81.6歳(SD 4.4、 range 75-95)男29, 女 52、)を対象として事前指示書や事前ケア計画に関する個別インタビューをおこない、認知機能検査との比較検討も行うことができた。また、両地域の研究協力者を招聘して研究打ち合わせを行なった。しかし、1.ライフ・イン京都の「終末期医療についての要望書」 2.高知県土佐町の高齢者NPO「とんからりん」作成の「おぼえがき」 3.Aging with dignityの 5つの願い(Five Wishes) 4.日本尊厳死協会の「尊厳死の宣言書」の4種類の事前指示書を融合した本研究独自の事前指示書を作成する予定であったが、両地域の高齢者の背景の相異から、研究打ち合わせの際合意に至らず、それぞれの事前指示書の書式をもちいて検討を進めることとなった。 このことにより、両地域における高齢者を対象とした事前指示書の作成に関する広報活動が延期となり、研究計画に若干の遅れをきたしている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き高齢者総合機能評価法による地域住民、入居者全体の健康度を測定するとともに、25年度中に事前指示書に関する住民勉強会、広報活動を開始する。また、英国・レスター大学、ノッティンガム大学のAdvance Care Planningガイドライン作成グループと情報交換し、地域住民への広報活動を行うとともに、事前指示や終末期ケアに関する文化的背景の差異を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
高知県、英国等への旅費、データ管理のための物品・ソフト購入費、総合機能評価検診や事前指示書広報活動にともなった謝金、質問紙のレイアウト作成費用、成果出版の為の英文校閲費用として使用予定である。
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