研究課題
終末期ケアのあり方について事前指示書を作成する高齢者が増加しているが、その作成プロセスや運用の実態・効果は明らかではない。高知県土佐町と有料老人ホーム ライフ・イン京都では,それぞれ住民や施設職員が独自の事前指示書を作成し運用している。計画3カ年目は、両地域において高齢者総合機能評価を継続し、事前指示書作成者数が増加傾向にあることを確認した。ライフ・イン京都においては、事前指示書作成者193名のうち施設内で死亡した24名について検討した結果、終末期の水分補給方法について経口摂取のみを希望していても末梢点滴を施行されるものが少なくないことがあきらとなった。ライフ・イン京都においては、入居者の社会的つながりをLubben Social networkによって評価して事前指示書作成との関連を検討したところ、つながりの強いものはよわいものに比べて事前指示書作成者が少ない傾向性を認めた。(P=0.1)計画初年度に土佐町在住者を対象とした認知症終末期の栄養方法に関する希望調査では、経口摂取のみを望むものが最も多く、ついで末梢点滴をのぞむものがおおかった。一方で中心静脈栄養、胃瘻、経鼻経管栄養を選択するものもそれぞれ約5%存在することがあきらかとなったが、これらの結果をアメリカ老年医学会誌に発表した。対象地域の他、京都府地域医療支援センター京都大学ブランチにおいても、事前指示書やAdvance Care Planning(ACP)に関する広報活動をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
高知県土佐町と有料老人ホーム ライフ・イン京都における総合機能評価検診の参加率は当初予想どおりであり、ライフ・イン京都においてはすべての事前指示書について内容確認をおこなった。計画初年度の横断研究の成果について国際誌に発表したほか、住民や医療者を対象とした事前指示書やAdvance Care Planningについての広報活動も予定どおり実施できた。
両地域において総合機能評価検診を継続し、事前指示書作成者数の推移と作成プロセスを明らかにする。死亡者については終末期医療の実態を可能な限り明らかにして事前指示書記載内容との相違を確認する。
研究協力者である博士課程大学院生らに謝金を支払って、総合機能ひゅうかを行う予定であったが、一部大学院生が日本学術振興会特別研究員となり研究に遅れがでたため、未使用額が生じた。
総合機能評価検診を次年度も継続し、未使用額は新たな研究協力者への謝金、統計ソフト等の物品購入、国際誌への発表のための経費に充てる予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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