本研究では、大阪府下の2つの二次医療圏で発生した9011例(平成24年度4363症例、平成25年度4648症例)の緊急重症事案についてその搬送先選定の妥当性をGISにより評価した。その結果、3次医療機関に直接に搬送した重症外傷事案において、消防覚知から治療開始まで31分以上を要した症例が平成24年度は14症例(3.3%)、平成25年度は36症例(8.6%)と推定された。また、3次医療機関に直接に搬送した症例のうち、ドクターカーもしくはドクターヘリを選択した方が早期の治療開始が可能であったと推定された事案は、平成24年度では、それぞれ、2193症例(84.9%)、397症例(20.4%)、平成25年度は、それぞれ、1586症例(59.4%)、427症例(21.9%)となり、より早期に医師接触が可能であったと推定される事案が多数存在する可能性があることが明らかとなった。これらのデータについてGISソフトを用いて地図上で可視化したところ、両年度でほぼ同様の場所で発生した症例であり、これらのデータを二次医療圏の消防機関に提供することにより、重症以上の傷病者に対して迅速で的確な病院前診療システムを選択することが可能となることが期待される。
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