研究課題/領域番号 |
24590610
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大澤 佳代 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (50324942)
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研究分担者 |
吉田 弘之 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (40626248)
白川 利朗 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (70335446)
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キーワード | メタロβラクタマーゼ / 基質特異性拡張型βラクタマーゼ |
研究概要 |
神戸大学附属病院関連施設にご協力いただき、腸内細菌科のサルモネラ属200株、大腸菌74株、さらにカルバペネム系薬剤に耐性と疑われる腸内細菌科の株35株を収集した。これらの薬剤感受性試験を行い、メタロβラクタマーゼ(MBL)及び基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌が疑われる場合、確認テストとして、MBL産生性はホッジテストやメルカプト酢酸による同定を行い、さらにESBL産生性についてはダブルディスクシナジーテストを行った。これらのDNAを抽出して、PCR法を行い、MBL産生菌特異的な遺伝子群(KPC, VIM, NDM, OXA, IMPなど)、ESBL産生菌特異的な遺伝子群を検出してシークエンス解析を行ったほか、キノロン系薬剤耐性遺伝子、病原因子検出、さらには疫学的な調査方法としてマルチローカスシークエンスタイピング(MLST)やパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、プラスミドレプリコン解析なども行った。①サルモネラ属では2株がESBL産生株と判定され(CTX-M-2とCTX-M-15)、PFGEによるパターン解析結果より、同一クローンから派生した可能性が示唆された。②大腸菌74株については72株がESBL産生株であり、キノロン耐性も多く認められた。ESBL産生株はすべてCTX-M遺伝子(多くはCTX-M-14型)が検出された。さらに、世界でも流行が懸念されているO25:H4、MLSTによるシークエンスタイプ131であるCTX-M-15型も5株検出された。CTX-M-15型には病原因子として、7種類の接着因子が検出され、プラスミドレプリコン解析ではF型が多く認められた。③カルバペネム系薬剤に耐性と疑われる腸内細菌科の株35株のうち、17株(48.6%)でMBL産生性が確認され、遺伝子解析の結果、IMP型とOXA型MBL産生株である可能性が示唆されている。内訳は肺炎桿菌10株、大腸菌7株であった。今後、シークエンス解析などさらなる調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本におけるMBL産生17株が確認でき、IMP型やOXA型である可能性が示唆されている。これらの詳細な遺伝子解析が現在行われているが、これらの株について、更なる情報が得られれば、今後のMBL産生株に対する感染防御の方策が期待される。 さらに、サルモネラ属におけるESBL産生菌の報告例はあまりないため、貴重な報告であり、本論文は今年度公表された(Osawa K et al. Jpn J Infect Dis. 2014;67(1):54-7.)。 大腸菌におけるESBL産生菌はO25:H4、シークエンスタイプ131であるCTX-M-15型のクローンが検出され、詳細な病原因子の確認も出来たことにより、今後の日本における伝播を防ぐ方策が期待される。本論文は投稿中である。 インドネシアにおける大腸菌の薬剤耐性についての詳細な解析も行う予定であり、日本との違いなどが明確に出来れば、インドネシアにおける薬剤耐性に対する対策が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画としては、MBL産生株の詳細な検討を行う予定である。具体的にはIMP型、OXA型などのシークエンス情報、VIM型などの更なるMBL関連遺伝子の調査、病原因子の検出、MLST、プラスミドレプリコンタイピングやPFGEなどの疫学調査を行い、その近縁性をみる予定である。さらにはMBLやESBL以外の薬剤耐性遺伝子情報(テトラサイクリン系、アミノ配糖体系、キノロン系など)も検討していく。 さらに今年度はインドネシアにおける神戸大学関連施設からの小児下痢症由来大腸菌129株を収集した。今後、大腸菌のMBLあるいはESBL産生性の検討、疫学調査、病原因子解析を行い、インドネシアと日本との比較などを行っていく予定である。 さらには、リアルタイムPCR法などにおけるMBLやESBLの早期診断法の開発を加えてさらに発展させる予定である。
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