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2012 年度 実施状況報告書

医療データに基づく動的病態力学の構築

研究課題

研究課題/領域番号 24590615
研究種目

基盤研究(C)

研究機関高知大学

研究代表者

奥原 義保  高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (40233473)

研究分担者 畠山 豊  高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00376956)
渡部 輝明  高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90325415)
片岡 浩巳  高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80398049)
中島 典昭  高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (00335928)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード病態推移予測 / 状態空間モデル / 数理生理学 / 電子化医療データ
研究概要

【精密予測モデル】糖尿病の短期的振る舞いの記述から出発し、糖代謝を記述する最低限の要素を取り入れた連立微分方程式からなる数理モデルを構築、階層ベイズモデルへと拡張することにより、検査データが充分に揃っていない患者の病態推移予測を可能とした。このモデルを高知大学医学部の総合医療情報システム(IMIS)に蓄積されているデータに適用し、糖尿病の病態進展段階を推定する手法を構築した。IMISに蓄積されているデータからは、Glucose disposalとInsulin secretoryの機能が互いを補い合うように働いている様子を観ることが出来た。この階層ベイズモデルの適用は疾患を限ることなく広く可能である。
【長期予測モデル】糖尿病の長期的振る舞いを記述し予測するモデルとして、脂質代謝の異常が糖代謝の異常をもたらすという考え方に基づく内部モデルと、それらを実際に観測される検査データに関係付ける観測モデルのセットからなる状態空間モデルを構築した。高知大学医学部の総合医療情報システム(IMIS)のデータを使った検討により、観測モデルで脂質異常に関連する検査としてHDLが,糖代謝異常に関連する検査としてHbA1cが最適であることなどがわかった。このモデルを粒子型フィルタによって実装し、モデル構築に用いたデータ以外のデータによって評価したところ、観測HbA1c値と予測HbA1c値における二乗平均平方根誤差が0.25と良好な値を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の計画は、既知の分子生物学、生化学、システム生物医学などの知識に基づいて、糖質代謝・制御と脂質代謝・制御のプロセスについてのシステムモデルの構築を行うことであり、糖質代謝と脂質代謝それぞれの制御系を、本質的に重要と考えられる部分だけを取り入れ、できるだけ単純なモデルを構築することであった。そのため、まず、それぞれの制御系に対する基本的な入力として一定の糖や脂質が入力される入力系を考える。これらの入力が、インスリンの分泌を促し、分泌されたインスリンが受容体を経て細胞内に取り込まれ、以降の情報伝達系において促進や抑制を惹起することによって、糖や脂質の分解や変換または新生や合成を行う部分および相互の影響をフィードバックやフィードフォワードのプロセスとしてモデル化し、時間的に常に安定した量を保つような系として成り立つ連立微分方程式系として全体のモデルを構築する。こうした連立微分方程式系に、確率的な変動の部分を加えてシステムモデルとする。この際、個人差による違いも確率的な要素と考えてモデルに取り入れることであった。
これらの計画について、糖尿病の短期的振る舞いの記述から出発し、糖代謝を記述する最低限の要素を取り入れた連立微分方程式からなる数理モデルを構築、階層ベイズモデルへと拡張することが達成できた。ただし、まだ脂質代謝のモデル化とその取り込みには至っていない。
一方で、次年度の予定であった、内部状態が実際に測定される検査値へ反映するメカニズムをモデル化し、観測モデルとする計画について、糖尿病の長期的振る舞いを記述し予測するモデルとして、脂質代謝の異常が糖代謝の異常をもたらすという考え方に基づく内部モデルと、それらを実際に観測される検査データに関係付ける観測モデルのセットからなる状態空間モデルを構築することにより、前倒しで実現できた。

今後の研究の推進方策

【病態の精密予測モデル】糖尿病における脂質の代謝についてもモデル化を行い、糖代謝と脂質代謝との関連をも含めた病態進展段階の把握を行えるように拡張する予定でいる。また、本研究で構築した階層ベイズモデルの適用は疾患を限ることなく広く可能であるため、適用疾患を増やし、臨床支援へ応用することを目指す。
【病態の長期予測モデル】糖尿病について、インスリン分泌能についても考慮したモデルへと拡張し、糖尿病の初期から中期以降までを予測できるモデルを確立することを目指す。また、年単位における超長期の変動を予測するためには、開始時点におけるインスリン分泌能を推定する必要がある。そのため、75g経口ブドウ糖負荷試験におけるインスリン濃度や随時血糖変動などの関係性を解析する予定である。これらを考慮したモデルを、臨床支援へ応用することを目指す。

次年度の研究費の使用計画

【当該研究費が生じた状況】モデル構築にあたって、当初の予想より課題や困難が少なく、情報収集のための旅費を使う必要性が予定より少なかったため繰り越した。
【平成25年度請求の研究費と合わせた使用計画】次年度は、情報収集や成果発表を目的とした学会参加のための旅費、知識提供の謝金の支払い、論文の英訳や投稿料等に研究費を執行する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 脂質代謝を考慮した糖尿病における病態予測モデルの構築

    • 著者名/発表者名
      畠山 豊、片岡 浩巳、中島 典昭、渡部 輝明、奥原 義保
    • 学会等名
      第16回日本医療情報学会春季学術大会
    • 発表場所
      函館国際ホテル(北海道)
  • [学会発表] 「欠損検査データ」に基いた病態推移の推定とその階層ベイズによる数学的枠組み

    • 著者名/発表者名
      渡部輝明、中島典昭、奥原義保、相良祐輔
    • 学会等名
      日本医療情報学会中国四国支部、第30回中国四国医療情報学研究会
    • 発表場所
      ウェルピア伊予(愛媛)

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公開日: 2014-07-24  

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