研究課題/領域番号 |
24590615
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
奥原 義保 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (40233473)
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研究分担者 |
畠山 豊 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00376956)
渡部 輝明 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90325415)
片岡 浩巳 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80398049)
中島 典昭 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (00335928)
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キーワード | 糖尿病 / 病態予測モデル / 状態空間モデル / 粒子型フィルタ / 階層ベイズモデル |
研究概要 |
糖尿病の長期的振る舞いを記述し予測するモデルとして、脂質代謝の異常が糖代謝の異常をもたらすという考え方に基づく内部モデルと、それらを実際に観測される検査データに関係付ける観測モデルのセットからなる内部状態モデルを構築した。高知大学医学部総合医療情報システム(IMIS)のデータを使った検討により、観測モデルで脂質異常に関連する検査としてHDLが,糖代謝異常に関連する検査としてHbA1cが最適であることなどがわかった。このモデルを粒子型フィルタによって実装し、モデル構築に用いたデータ以外のデータによって評価したところ、観測HbA1c値と予測HbA1c値における二乗平均平方根誤差が0.25と良好な値を得た。この観測モデルで考慮したHDLが膵ベータ細胞の機能を亢進するというエビデンスが最近多くの研究で指摘されており、我々がこれまで構築したモデルで、糖尿病の初期たけではなく中期以降までを予測できると考えられることがわかった。このモデルについて論文にまとめ、Methods of Information in Medicineに投稿、アクセプトされた。 糖尿病の短期的振る舞いの記述から出発し,糖代謝を記述する最低限の要素を取り入れた連立微分方程式からなる数理モデルを構築し、階層ベイズモデルへと拡張することにより、検査データが充分に揃っていない患者の病態推移予測を可能とした。このモデルをIMISに蓄積されているデータに適用し、糖尿病の病態進展段階を推定する手法を構築した。データからは、Glucose disposalとInsulin secretoryの機能が互いを補い合うように働いている様子を観ることが出来た。この階層ベイズモデルの適用は疾患を限ることなく広く可能である。この結果を論文にまとめ、Computers in Biology and Medicineにアクセプトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、既知の生物・医学的知識に基づいて糖や脂質の統合的な制御系という内的状態を記述するシステムモデルと、内的状態が実際に観測される検査値に反映されるメカニズムである観測モデルの2つのモデルからなる状態空間モデルを、高知大学医学部の総合医療情報システムに30年間蓄積された検査データとの比較を行いつつ構築し、生活習慣病等、生体の正常な制御系の集合が多数の因子の変化によって安定な状態からずれ、最終的には制御系の連鎖が破たんして発病に至るという状況を定量的かつ動的に記述する動的病態力学モデルの構築を行うことを目的としている。 今まで糖尿病の長期的振る舞いを記述し予測するモデルとして、脂質代謝の異常が糖代謝の異常に影響するという考え方に基づく内部モデルと、それらを実際に観測される検査データに関係付ける観測モデルにおける脂質異常に関連する検査としてHDLを,糖代謝異常に関連する検査としてHbA1cを用いた状態空間モデルを構築し、粒子型フィルタによって実装、モデル構築に用いたデータ以外のデータによって良好な評価結果を得た。またこの結果をまとめた論文が英文誌にアクセプトされた。さらに糖尿病の短期的振る舞いの記述について、連立微分方程式からなる数理モデルを階層ベイズモデルに拡張し、糖尿病の病態進展段階を推定する手法を構築した。この結果をまとめた論文も英文誌にアクセプトされた
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、糖尿病における脂質の代謝についてもモデル化を行い、糖代謝と脂質代謝との関連をも含めた病態進展段階の把握を行えるように拡張する予定でいる。 また、これらのモデルを用いることによって、個々の患者の過去から現在の検査データに基づいて患者の病態の進展段階を把握したり、生活習慣に対応した今後の病態予測予測を正確に行い、患者の治療方針の選択や生活習慣の指導に役立てるなどの臨床支援へ応用することを目指す。 さらに、糖尿病以外の疾病に対しても、病態を動的に記述・予測するモデルの構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内に投稿していた論文2本のアクセプトが次年度にずれ込んだため、投稿料や別刷り請求に予定していた所要額を執行できなかった。また、従来から使用していた解析用PCの買い替えを予定していたが、OSサポート切れに伴う買い替え需要が集中して希望機種の納品予定が年度内には困難であることが判明したため、購入できなかった。それに伴うソフトウェアの購入も延期した。 繰り越し分は、アクセプトが決まった論文2本の投稿料や別刷り請求、買い替えを見送った解析用PCと関連ソフトウェアの購入に使用する。余剰が出れば、論文の英文校正や学会参加の旅費、知識提供の謝金などに使用する予定である。
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