研究概要 |
医療安全分野では、インシデントレポートのオンライン運用が普及しているが、従来システムは医療安全への直接効果を狙ったものではない。我々は、「インシデントレポートの積極的閲覧促進」と「再発防止策の確実な評価」および「医療安全に特化したEラーニングシステム」により、直接的な安全効果を発揮するシステムを開発した。本研究は、本システムの医療安全効果の長期的な評価が目的である。インシデントレポートによる安全管理上、必要条件となる報告数については、本システム導入前の973件(H18年度)に対し導入後、1,907件、1,908件、2,700件、3,192件、3,647件、3,740件、3,647件と年々増加した。インシデント事例の周知を反映する月平均レポート閲覧数も1,738.9件、5,178.0件、8,755.7件、10,815.7件、15,091.3件、16,640.3件、17,979.0件と年々増加し、8年目のH25年度では導入1年目(H19年度)の10.3倍に達した。インシデントの重篤度を示す影響レベルの評価では、影響レベル「3b」以上のインシデントが、運用前のH18年度3.49%(34件)に対し、1年目(H19年度)1.16%(22件)、2年目(H20年度)1.27%(24件)、3年目(H21年度)0.98%(26件)、4年目(H22年度)1.78%(56件)、5年目(H23年度)1.38%(50件) 、6年目(H24年度)1.32%(49件)、7年目(H25年度)1.55%(56件)と導入後は、導入前より全て発生率が低かった。一方、本システムに導入した研修会内容のビデオ配信であるE-ラーニングシステムの利用状況は、H23年度、24年度、25年度の平均受講者数が921.0人、721.5人、816.7人であり、研修会未受講者のE-ラーニング受講率は75.3%、66.7%、75.9%と、H25年度が最も受講率が高かった。研修会受講者とE-ラーニング受講者を加えた総受講率はそれぞれ、85.6%、83.0%、88.0%と受講率は極めて高く医療安全教育研修への参加者の増加に貢献しているものと思われる。以上により本システムが医療安全に対し有効と判断した。
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