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2012 年度 実施状況報告書

プラセボ効果の解析と新規服薬カウンセリング療法への展開

研究課題

研究課題/領域番号 24590631
研究種目

基盤研究(C)

研究機関慶應義塾大学

研究代表者

井澤 美苗  慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (10338006)

研究分担者 辻井 岳雄  日本大学, 医学部, 研究員 (80424216)
中島 恵美  慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (90115254)
酒谷 薫  日本大学, 工学部, 教授 (90244350)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードプラセボ効果 / カウンセリング / ブレインモニタリング / NIRS
研究概要

近年の脳科学の進歩により生体の脳を可視化するブレイン・モニタリング技術が開発され、心理反応を起こす脳内部位の特定や反応を定量化できるようになった。ブレインモニタリングシステムの非浸襲的身体機能測定方法の一つである光トポグラフィー(NIRS:near-infrared spectroscopy)を用いて、論理型(プラセボノンレスポンダー)と情動型(プラセボレスポンダー)を分けることが可能であれば、プラセボ効果の解明にもつながることが考えられる。本講座では、NIRSを用いたパイロットスタディとして、芳香療法臨床試験を実施した。この結果はAsian Federation for Pharmaceutical Sciences, Kuala Lumpur Malaysia,2011 にて発表、2012年度にはJpn J Pharm Health Care Sci , 38(4) : 265-71, 2012にて論文発表した。芳香療法を施すことにより一般的疲労感及び精神的疲労感が有意に改善した結果を得た。NIRSを用いた検討では、脳前頭前野の認知に関連する分野(Brodmann’s Brain map 46野に相当する)の血流量を変動させた。
2012年度には、プラセボ効果の有効活用を目指した要因解析を行い、服薬アドヒアランスとして重要な能動的心理反応を引き出す服薬カウンセリングの効果について認知要因の個別化解析を行った。カウンセリングは、生活者の満足度や薬の効果を高め、薬物療法の中で最も重要な項目に位置づけられると考えている。非侵襲的脳血流測定法として、NIRSを用い、市販薬服用後に服薬カウンセリングを認知する脳活動の指標を得た。今後は、医薬品に対する主観的反応、客観的反応と合わせて、服薬アドヒアランス向上に資する要因解析を行うとともに、個体間変動を解析する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

助成初年度の2012年度には芳香療法臨床試験(認知誘導における確認試験)、ドリンク剤臨床試験(認知誘導における確認試験)を実施した。芳香療法臨床試験では、被験者14名で臨床試験を実施し、カウンセリングにより効果が増大し、ブレインモニタリング研究においても有意にストレスを減少させた結果を得た。ドリンク剤試験については被験者20名で実施し、カウンセリングにより効果が増大し、ブレインモニタリング検討では、認知を司る部位の活性が増大した。また、プラセボ効果について考察し得る結果を得ている。カウンセリング(認知療法)により効果が増大した結果を得た。認知療法はプラセボ効果を変動させる因子であることを裏付ける結果を得た(結果の一部を医療薬学会2012にて発表、論文執筆中)。またプラセボ効果の実態を把握するために臨床試験の文献調査した。プラセボ効果は、患者の客観的評価(血圧や呼吸機能など)に比べると、主観的評価(痛みや眠気など)を大きく変動させることがわかった。

今後の研究の推進方策

プラセボ効果は条件付けと期待による高度な脳活動に因るものであると指摘されている。このプラセボ効果を有効利用することで医薬品の効果を向上させることが期待される。我々のドリンク剤に関する先行研究により、「いずれも効果が強く現れたレスポンダー(プラセボ効果を受けやすい被験者)、いずれも反応しなかったノンレスポンダー(プラセボ効果を受けない被験者)を確認している。レスポンダーは生薬が配合された群、生薬が配合されない群のいずれにも反応し、ノンレスポンダーは、いずれにも反応していなかった。レスポンダー・ノンレスポンダーの比率は、各々約10%という結果が得られた。これまでのドリンク剤の結果を踏まえ、次年度は、さらにプラセボ効果の解明を行うための臨床試験を計画する。主観的効果の眠気を予防する医薬品であるカフェインに関する臨床試験について被験者60名を対象に実施する。プラセボ効果の個別化の研究としては、プラセボ効果を変動させるマーカーを調査し、試験に組み入れることする。有力なマーカーとしては、様々な文献調査から、認知に関連するセロトニントランスポーターの遺伝子多型が挙げられる。今後は、医薬品について、プラセボ効果を変動させる個別化に着目して、臨床試験を拡大化して遂行する。

次年度の研究費の使用計画

残金の発生は、被験者の臨床試験に対する負担を小さくしたため、報酬額が若干少なかったためである。使用計画は、100万(物品費)、旅費(60万)、人件費(30万)、その他(20万)である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Effectiveness of Aromatherapy Evaluated with Subjective and Objective Cognitive Indicators: A clinical trial on young adults using near-infrared spectroscopy.2012

    • 著者名/発表者名
      Shinno A, Isawa M, Itoh H, Kose N, Ishino H, Nishimura T, Tomi M, Tsujii T, Shimada H, Saito H, Nakashima E
    • 雑誌名

      Jpn J Pharm Health Care Sci

      巻: 38(4) ページ: :265-71

    • DOI

      1346-342X

    • 査読あり
  • [学会発表] アロマテラピーの臨床研究情報と薬物療法への応用に関する薬剤師意識調査2012

    • 著者名/発表者名
      井上志保、信野明美、井澤美苗、登美斉俊、佐々木琢也、中島恵美
    • 学会等名
      第22回日本医療薬学会年会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      20121027-20121028
  • [学会発表] 臨床効果と心的制御機構に関する研究:服薬カウンセリングの現状調査とドリンク剤臨床試験における検討2012

    • 著者名/発表者名
      清水絢子、宮下恵里、信野明美、井澤美苗、登美斉俊、中島恵美
    • 学会等名
      第22回日本医療薬学会年会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      20121027-20121028

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公開日: 2014-07-24  

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